第293話 恩を
「陳宮殿、お陰で孫権様の仇を討てました。
この御恩、この黄蓋生涯忘れませぬ。」
「いえ、劉表を討てたのは黄蓋殿の忠信があればこそです。」
「ありがたいお言葉。
陳宮殿、劉表の首を国に持ち帰りたいのですが宜しいですか?」
「それは構わないが1つ提案があるのだがよろしいか?」
「提案ですか?」
「孫権殿の首と交換致しませぬか?」
「それは願ってもない!!」
「幸い劉表の子息を捕えてあります、この者も付ければ嫌とは言えますまい。」
「陳宮殿には感謝しかございませぬ。」
「では話を持ちかけてみましょう。」
俺は劉表軍で捕虜になっていた張允に話を持ちかける。
「つまり私が使者となり話を持ちかければいいのですね。」
「ええ、悪い話では無いはずですが?」
「わかりました、蔡瑁も話にのることでしょう。」
劉表が討った今、劉表軍を纏めているのは蔡瑁である、彼は劉琮の叔父であり、劉琮がいるかいないかで発言力が変わってくる、話にのらない筈が無かった。
張允が話を持ち帰ると・・・
「劉表様が亡くなり劉琮が捕まっているのか・・・
勿論交渉に応じると、張允、孫権の首を預けるすぐに劉琮を連れ帰って来てくれ。」
「勿論だとも。」
劉表が亡くなった今、後継者は二人、長男の劉琦と次男の劉琮になるが、劉琦は蔡瑁と血の繋がりは無い、しかもこれまで劉琮を後継者に据える為に様々な嫌がらせとも思える行動をしてきている為に劉琦が後を継ぐと蔡瑁は立場を失うだけではないすまない可能性がある、何としてでも劉琮を取り戻す必要があった・・・
「やはりすぐに取り戻せたな、張允殿よくやってくれた、これは感謝の気持ちだ。」
首を持ってきた張允に俺は百金を張允に渡しその功に報いる。
「ありがたい、して劉琮様はこのままお連れしても?」
「構わない、誰か劉琮殿をこちらへ。」
俺は劉琮を呼び付け張允に引き渡す。
「おお張允よく助け出してくれた。」
劉琮は涙を流し張允に感謝を伝えていた。
「勿体無いお言葉にございます。
そのお言葉を生涯の誉れと致しましょう。」
張允が恩を売りつけている所を俺達は冷めた目で見ていた。
「張允殿、劉表の首も忘れずに持ち帰りください、これも条件ですからね。」
「勿論だとも、さあ劉琮様参りましょう。」
「なんと父上の首も取り返してくれたのか!
張允の忠誠見事であるな。」
劉琮は張允を褒め讃えながら俺達の前から姿を消していく。
「陳宮、孫権殿の首と交換なら劉表の首もだけででも良かっただろう?
何故劉琮も付けて返すんだ?」
成廉が疑問に思った事を聞いてくる。
「あれが帰る事で劉表の家では跡目争いが起きるだろ?
調べによると長男劉琦は劉備が推していて、劉琮は蔡瑁の甥だ、蔡瑁は必ず劉琮を推すだろう。
そうすれば勢力を二分した争いとなるだろう。」
「なるほど、返す事で国が割れるか。」
「まあどちらが勝っても暫くは身動きが取れないだろうな。
その間に俺達はやるべき事を片付ける必要がある。」
「何をするつもりだ?」
「やることは二つ、一つは孫家に弔問に行こうと思っている。
もう一つは北の袁尚をそろそろ片付けておかないとな。」
「陳宮、袁尚討伐は構わないが、弔問は危険過ぎる!」
話を聞いていた張遼は止めに入る。
「孫権殿は俺達と共同作戦中に悲劇に合われた、俺が弔問するのは当然だろう。」
俺の言葉に不安そうな張遼の表情が目の前にあった。
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