第292話 劉表
黄蓋の突撃を見た夏侯覇はその凄さに思わず立ち尽くす。
「あれが孫家を支えきた猛将の力か。」
年齢こそ老齢とも言える黄蓋だがその気迫は若い者に負けておらず、むしろその忠誠心から発揮される気迫は尋常の物ではなかった。
夏侯覇が呆けている間も魏越は黄蓋の突撃を援護するために劉表を取り囲みつつ、矢を後方から射掛けていた。
「深く入る必要は無い、主攻は黄蓋殿に任せよ、俺達は追い立てるだけでいいぞ。」
魏越は黄蓋が劉表を討ち取れるようお膳立てをしていく。
「はっ!全軍黄蓋殿に続け!」
呆けていた夏侯覇は魏越軍の鬨の声を聞き、気を取り戻し黄蓋の突撃に続く。
「夏侯覇殿かたじけない、劉表!覚悟せよ!」
夏侯覇の突撃が始まった事により黄蓋への圧は更に下がる、黄蓋の行く手を阻むものはいなかった。
瞬く間に劉表の目の前まで馬を進める。
「劉表!その首もらったあぁぁぁ!!」
「待て!槍を収めよ!降伏、降伏する!」
「戯言をぬかすな!!」
劉表の降伏の言葉を聞くことは無かった、黄蓋は怒りのままに左肩から斜めに斬りつける。
「こ、こうふ・・・」
劉表は自身の末路を信じられない様子を浮かべ絶命した。
「怨敵劉表!!討ち取ったりぃぃぃ!!」
黄蓋の叫びは主の仇を取れた悲しみの咆哮だった・・・
劉表が討たれている頃、俺は襄陽に入り住民の混乱を収めていたのだが・・・
「なに、劉表が息子を置いていってる?
なんで劉家は子供を置いていく癖があるんだ・・・」
俺は少しうんざりしながらもその子供に会うしか無かった。
「貴殿が劉表の子、劉琮か?」
「ひぃぃ、た、助けてください・・・」
連れて来られた劉琮は十歳を少し越えたぐらいの歳に見え、酷く怯えている様子が伺えた。
「大丈夫、私は子供を意味も無く殺したりはしない、ただ真実を話してください。」
「わ、私は劉琮です・・・」
「そうか、何故父と共に行かなかったのか?」
「・・・私は馬に乗れず」
劉琮は恥ずかしそうに答える。
「なるほど・・・
わかった、その身は私が預かりしてもらおう。」
「ど、どうか殺さないでください!!」
「殺すつもりは無い、交渉次第になるが帰れるようにするつもりだ。」
俺の言葉に劉琮は少し安心しているように見えた。
「牢にいれる必要は無い、それなりの扱いで捕虜とせよ。」
俺は劉琮が一人で何か出来るとは思えなかったのであえて牢に入れず見張りだけを立てて軟禁することにする。
「甘いな陳宮。」
「そう言うなよ、子供を虐待するつもりは無いだけだ。
それより城内の様子はどうだ?」
「概ね落ち着いてきている、まあすぐに完璧に落ち着くのは無理だろうな。」
「まあな、取り敢えず門の修復を最優先に、曹操に使者を出し防衛してもらう人を送ってもらう。」
「飛び地になるからね新野、襄陽は曹操にやるさ。」
「それはまた大盤振る舞いだな。」
「押し付けているとも言うけどな。」
俺は新野、襄陽を守る将が派遣されるまで住民の慰撫に務めるのであった。
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