第287話 急遽、移動
孫権が討たれたという報せはすぐに天下を駆け巡る。
それは当然俺のところにも・・・
「孫権殿が!まさか周瑜殿もついていながら・・・」
俺は第一報が届いた時、まさかと思っただが、その後、詳細な報せが届くたび真実だと感じる。
「戦をしている場合じゃないな、俺は張遼の所に向かう、張郃は引き続き新野を守っていてくれ、趙雲護衛は任せたぞ。」
「しかと守ります。」
「お任せあれ。」
「先生、僕達もお供をさせてください。」
曹彰達も付いて来ようとする。
「わかった、だが戦況は動いている、危ないかもしれないぞ。」
「無論覚悟の上です、それに危ないのは先生も同じはず、僕達は先生を守る為にもお供します。」
曹彰が言うように俺より曹彰達の方が強い事は間違いない。
「確かに言うとおりだな、曹彰、俺の護衛を任せたぞ。」
「はい!」
曹彰から元気のいい返事が返ってくる。
俺達は襄陽に向かっている張遼目指す。
「先生、今後どうなるんですか?」
道中、曹彰が馬を並べてたずねてくる。
「難しいな、孫家は短期間で主君が代わりすぎている、周瑜殿の差配に期待したいが落ち着くまで時間がかかるだろう、それまで劉表・・・いや、劉備が仕掛けないとは思えない。」
「劉備ですか・・・
それなら先生が劉備を先に始末すればどうでしょう?」
「あれは逃げ足が早くて中々仕留めれない、城に固執しないから厄介なんだよ。」
これまで劉備は戦に負けそうになると平然と逃亡する、逃げ込んだ先で恩を受けても知らぬ顔で次に向かうことの出来る厚顔無恥な男だ、あれを仕留める程深追いするにはまだ天下が広すぎる。
「先生の劉備に対する評価は辛辣ですね。」
「曹彰、劉備は名声こそあれど、やっている事は裏切り者だ。」
「裏切り者ですか?」
「そうだ、しかも民を守るような甘い言葉を吐く癖に平気でその民を見捨てて別の地に逃げ出す卑怯者だ。」
「・・・言われてみると、徐州の民に請われて太守になったというのに簡単にその地を捨てていますね。」
「ああ、劉備にあるのは自らの地位を上げる事だろう、皇家を名乗る以上、機があれば王位を得ようとするかも知れん。」
「劉備が王にですか?」
「支配する土地があればあり得る話だ、陛下も同姓である劉備に期待している気持ちがあると聞いている。
時が許せば劉備が王になる可能性は十分にある。」
俺が警戒している事を曹彰に伝える。
「陛下は曹家を疎ましく思っておられるのでしょうか?」
「・・・まあ、正直言うと曹操の立ち位置にいれば誰であれ簒奪を疑われるだろう。
それだけ曹家は力を持ちすぎている。」
「しかし、父上は簒奪する意志は無いように思われます。」
「曹操はな、元々家臣の血筋である事も知っている、だが次の世代はどうだ?曹家に仕える家臣としては曹家に天下を取ってもらいたいと思う者もいるだろう。
そうなった時にどれだけの者がそれを押し止めるか。」
「・・・確かに、家臣の事を思えば父上も。」
「まあ、それだけ陛下に力が無くなったという話ではあるな。
曹彰は曹家が天下を取ることに抵抗は無い、だが民を慈しむ事だけは約束してくれ。」
「はい、僕が出来る限りの事はします!」
俺は曹彰に民を大事にする為政者になるように教育していくのだった。
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