第278話 関羽との攻防

俺が新野に着くと関羽は城外に布陣し、待ち受けていた。

「篭城もせずに野戦で決着をはかるか、流石は関羽というべきか・・・」

遠征で疲れた兵を相手に一当てするのは悪くない策だ、だがこちらも手前で休養を充分取ってから新野に来ている、篭城しないと言うのなら手間が省ける。

「張遼、いけるか?」

「当然だ、魏越、成廉は両翼に開き関羽の側面を狙え、張郃は正面にて向かってくる関羽を防げ、ただし倒す必要は無い、関羽の攻撃を受け止めるだけでいい、攻撃は両翼と二人が行う。」

張遼は俺が言う前から指示を送っており、既に戦闘態勢は整っていた。


「流石だな。俺の出番が無い。」

「戦場でお前に出番を与えるつもりは無いな、大人しく後ろで見ていろ。」

張遼が言い終わる前に関羽の突撃が始まり、張郃が防戦に入る。



互いに攻撃を行えばチカラの強い方が突破出来るが堅く防戦すると関羽の武勇といえど楽に突破は出来ない、それどころか側面を突かれ兵を削られていく。

「この軍には武の誉れを持つ者はおらぬのか!

武に生きる者がいるなら一騎討ちに応じよ!」

関羽は現状打破の為に一騎討ちを求めるものの、守りに入っている張郃は応じない、自身の武より勝つ事が優先という事を陳宮からきつく言われてもいたのだ。

「苦し紛れの言葉が出たぞ、我等の戦い方は敵を追い詰めている、全軍しかと防衛するのだ!」

張郃は兵の士気が下がらぬように声をかける、自分達の戦いに意味があると知れば士気は簡単に下がったりしない、堅く守る張郃達を突破できず関羽は窮地に立たされていた。


「そろそろ頃合いですかな。陳宮様合図を送りましょう。」

「わかった、狼煙をあげよ。」

俺は陸遜の進言に従い狼煙を上げる、すると・・・


新野の四方の城門で爆発が起きる。

「「「何事だ!!」」」

「やはり火は美しい・・・」

あまりの爆発に敵味方関係無く視線が新野に向かう、ただ一人陸遜だけが興奮した目で新野を見つめていた。

陸遜は美鈴との共同研究にて火薬の精製に成功していた、それを今回の戦の前に城内には運び込み、爆発させる事で城門の破壊に成功していた。


「城の門は既にありません、周倉、手筈通り城を占拠してください。」

陸遜は気を取り直し、別働隊として待機していた周倉に命じ城に向かわせる。


城門が無くなり、別働隊が新野に向かうとあっては関羽が率いる軍とはいえ動揺が広がっていた。

「今だ、全軍攻撃に移れ!!」

張遼が指示を出すと防戦していた張郃も待っていたかのように攻撃に移る。

「これまで耐えた分も相手にぶつけてやれ!!」

士気が落ちている関羽軍に襲い掛かる。


「致し方ない、全軍城に戻るぞ!」

関羽は周囲の兵を薙ぎ払いながら新野へと急ぎ引き上げるのだった。

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