第276話 徐庶、来訪
「徐庶です、この度は母の推挙により罷り越しました。」
「徐庶殿、さぞお辛い選択だったでしょう。」
俺は現れた徐庶の手を取り声をかける。
「陳宮様・・・
この徐庶、これからは陳宮様の配下として末席につかせていただきたい。」
「徐庶殿、貴殿には徐福殿が献策してくれた戦災にあった者達への対応をお願いしたい。」
「母の献策ですか?」
「そうだ、まだ運用するには何も煮詰めていない話ではあるが民の為に尽くしてもらいたい。」
「・・・あの、劉備軍の内情とかは聞かないのですか?」
徐庶は教えるつもりは無かったが質問もされない事を不思議に思う。
「徐庶殿、貴殿が苦渋の選択をして私の下に来たのは理解しております、そのような方にさらなる苦渋を求めるような真似は致しません。
徐庶殿、如何なる状況が起きても劉備軍に対する献策は行わなくて構いません。
親孝行をし、民の為にそのチカラをお使いいただきたい。」
「陳宮様、感謝致します。」
徐庶は陳宮の心配りに感謝する。
「徐庶殿、徐福殿がお待ちです、今は親子の情を温めてください。」
俺は同行してもらっていた徐福を招き入れる。
「徐庶、徐庶!!」
徐福は徐庶を見ると駆け寄って行く、だが年老いた足は徐庶に辿り着く前に転倒しそうになった。
「母上!!」
徐庶は徐福が転倒する前に駆け寄り抱きしめる、
「母上、申し訳ありません、私が浅慮な真似をしたばかりにご苦労をかけました。」
「徐庶、昔の事は良いのです、貴方が無事、元気で過ごしてくれていたらそれで母は満足なのです。」
「これからは私が母上のお世話を致します、何なりと言ってください。」
徐庶と徐福は涙を流しながら再会を喜んでいたのだった。
徐庶と徐福が別室に引き上げた所で会議を始める。
「陳宮様、徐庶に聞かなくてよろしかったのですか?」
龐統が確認の為に聞いてくる。
「聞く必要は無い、それにどのような陣容であれ徐庶殿が漏らすとも思えない。
ならばこそ、聞かずにおくのが人としての道だろう。」
「徐庶に代わり礼を申し上げます。」
龐統は恭しく礼をする。
「それにだ、ここは多くの智将、武将がいる、新野を落とすぐらい訳無いだろ?」
俺は周囲の仲間を見て笑う。
「たしかにな、徐庶一人のお陰で勝ったなどと言われれば立つ瀬が無い。」
張遼も軽く笑う。
「そうですね、それに既に策はございます、徐庶殿に恩を売った方が今後彼も良く働いてくれるでしょう。」
陸遜は少し黒い笑みを浮かべる、陳宮軍では文官は貴重である、戦以外を押し付けれる者がいるのは大歓迎なのだ。
「そういう下心でやった訳じゃないけど、
内務に精を出してくれたら嬉しいなぁ・・・」
実際俺も下心が満載なのであった。
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