第267話 劉備の軍師
劉備軍が居城の新野城の内政から始まり軍の再編成に大きな動きがあった事が報告されてくる。
そして、その内容を見て驚くこととなる。
「これを劉備がこれを?」
俺は報告を再度見直す。
劉備はこれまで法というものを軽視し、義侠心による判断を重要視していた、だが、今回の改革では法による統治を住民及び軍に対しても厳しく取り締まるようになっていた。
劉備は良くも悪くも義侠心により住民の心を掴んで来た漢だ、法による統治の方が優れている事に間違いは無いが、劉備がそれに当てはまるかどうかはわからなかった。
「しかし、なんで劉備は急に法による統治に切り替えたんだ?」
「たぶん、諸葛亮を軍師につけたのでしょう。」
悩む俺に龐統が答える。
「諸葛亮?」
「はい、私と同門にして私より凄く優秀な男です。」
龐統にして、自身より優秀と言わしめるのは余程の相手に違いない、ましてや義侠心の塊のような関羽、張飛を納得させなければならないだろうに・・・
そこまで考えてふと気付く。
本当に関羽と張飛が納得しているのだろうか?
劉備は小利口に立ち回る事をする男だが、あの二人は簡単に納得しないだろ、むしろ新参者の言うことに反発していてもおかしく無い。
「龐統、諸葛亮の性格を教えてくれ。」
「性格ですか?そうですね、当たり障りの無い男ではありますが、策は現実主義なのに反し、個人的には少々理想主義な所がございますね。」
「人付き合いはどうだ?」
「自分の下に入る者には寛容ですが、自分と同格の者には嫌がらせをしてくる癖がございまして、対等に親しく付き合う者は少ないと思います。」
「龐統、君の才覚なら対等とみなしていたのではないか?」
「私はこの見た目ですからね、才覚は認めていても同格とは思っていなかったのでしょう。」
「見た目か・・・
私も言えた物じゃ無いからな。」
俺には龐統の気持ちがわかる、優れた才覚があれど優遇されるのは見た目の良い者の話というのは若い頃に経験していた、曹操、呂布と見た目を気にしない主君に恵まれたからこそ自身の才覚を天下に知らしめる機会を得ているのだ。
「陳宮は私のような者に勇気を与えてくれる、是非頑張って欲しい。」
龐統は俺の肩に手を置き懇願するように言う。
「大げさだなぁ・・・
話は逸れたが龐統、諸葛亮は劉備陣営に重用されていると思うか?」
「・・・私は劉備殿を噂でしか知らない為、答え辛いですが、武人達には簡単に受け入れられる者では無いと思います、ただ類稀なる戦果を上げた後なら認める者がいてもおかしく無いと考えます。」
龐統は俺の質問から諸葛亮の事を考え答えてくる。
「ならば戦果を与えなければ?」
「簡単に認められる事は無いでしょう、特に義侠心と法はぶつかる時があります。
関羽、張飛の二枚看板を黙らせる程の戦果が無ければ内部で争いが起きるかも・・・
いや、それでも時間をかければ諸葛亮ならなんとかするかも知れませぬ。」
「諸葛亮を知る龐統が言うなら放置するのも危険か、よしまだ勢力が増さないうちに劉備を撃退しておくか。」
俺は曹操に進軍許可を取りに向かうのだった。
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