第266話 献策

翌日、龐統から仕官を申し出てくる。

「龐統、これから宜しく頼む。」

「はい、微力ながら尽くさせていただきます。」

仕事を始めた龐統は次々と書類を片付けていく・・・

「すげぇ・・・」

その処理速度は俺を超えており、あまりの早さに俺の手が止まっていた。

「陳宮様、このような書類を陳宮様が処理する必要はありません、陳宮様は決裁が必要な物を処理すべきです。」

「いやぁ、うちは文官が少なくてどうしても俺もやらないといけなくて。

あっ、龐統、俺の事は陳宮でいいから、様なんてつけなくていいよ。」

「ならば陳宮、文官を増やすべきです、数字を把握することは大事ですがあまりに多くを抱えすぎにございます。」

「文官を増やしたいけど中々ね、領地も急激に増えたから間に合って無いんだ。」

「ならばこそにございます。

あまりに多くを抱え込むのは疲労が大きいでしょう、そこでです、今陳宮が治めている領地にある程度の裁量権を預け差配を任せるのはどうでしょう。」

「いや、今も高順や、臧覇には要所を守ってもらっているけど。」

「守るだけでは無いのです、幸い文官を纏めるに優れた者が多くいらっしゃいます、その方達に各地の書類を纏めさせるのです。」

「優れた者か、確かに陸遜や司馬懿は俺から見ても優秀な人物だな。」

「ええ、そこで北の平原には離間の計を行っている司馬懿、臨淄は司馬朗、南の下邳は陸遜に任せるのです、そうすれば本隊である陳宮が自由に動ける事でしょう。」

龐統は地図を出し説明してくる。

「任せるというがどこまでと考える?」

「軍事、内務両方にございます、北の司馬懿は高順と話し合い袁尚侵攻作戦を任せても良いと思います。」

「侵攻作戦もか!」

「はい、司馬懿なら大役を担えると考えます。」

龐統は書類の纏め方を見て司馬懿、司馬朗、陸遜と話し合い今後の陳宮の動き方について検討を行った結果、曹彰軍の編成という大役を任され動けない陳宮に代わり手足のように動ける軍の構築、多方面から同時に攻められても返り討ちにするための準備を整えるべきとの結論に至り、陳宮に献策しにきていた。


「確かに現場で判断出来れば行軍の早さが変わるのはわかる認めよう。

・・・だが私がやるべき事が少なくないか?

曹彰軍の編成といえどいつまでもかかりきりという訳でも無いし、この上書類業務まで奪われると私は暇を持て余してしまう。」

「何を言うのですか、陳宮にはすべき事がございます。」

「なに?」

「お世継ぎを早急にお作りになることです。」

「待て!それはお前らが時間を作らなくても・・・」

「必要な事にございます。

それもなるべく早い方がいいのです、その為なら他の事は他者に任せてもよろしいかと。」

「いやいや、俺は天下の為に・・・」

「世継ぎを作るのも天下の為にございます。

これらの布告は皆に伝えておきます。」

「おい、龐統再検討を!!」

俺の声は龐統のみならず周囲の家臣達も聞き流すのであった。

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