第259話 次世代の・・・

「曹彰、曹操から頼まれて君の直属の軍を編成することになった。」

「僕の直属の軍ですか?」

「そうだ、まあ曹操の跡継ぎとして次世代の将を育てる意味合いが強いかな。」

「確かに・・・

僕達の世代を引き締める為にも必要かも知れませんね。」

曹彰は考える、夏侯充から始まり、自分達子供世代が陳宮を妬み引き起こした事は曹操の跡を継ぐ自分からすれば害悪でしか無い、それもこれも都に留まり、富貴を味わい、戦火の厳しさを知らぬから他ならないと感じる、それならば戦場に立ち苦難を味わうことで引き締める事が出来るのではないか。


「先生に選んでいただけるなら、この曹彰何よりも信じられます。

どうか御協力ください。」

「私は推薦するだけだよ、曹彰が見て判断するんだ。

こればかりは本人の相性もあるからね。」

「はい!」

こうして、曹彰直下の将の選抜が始まる、曹丕が廃嫡された今、曹彰に選ばれる事が次世代の曹家を担う者になることは明白であり、多くの者達が選ばれる事を望むのであった。


俺は最初に夏侯衡を呼ぶ。

「陳宮様、お呼びと聞き参りました。」

夏侯衡は深く礼をする。

「夏侯衡、私は君を曹彰の側近に推挙しようと思うのだが?」

「私をですか?しかし、私はまだ何も成していません、陳宮様の下でもっと学ばせていただきたく思います。」

鄴攻めにおいて夏侯衡は戦場に立っていない、俺の幕僚の一人として軍事物資の管理をやらせていたのだが、華の無い仕事にも関わらず、文句の一つも言わずに黙々とこなしていた事を俺は評価していた。


「何も教えない訳では無いよ。

曹彰も含めて夏侯衡にもしっかり学んでもらうからね。

ただ、これからは曹彰に必要な者として君を推挙したいんだ。」

「しかし、私は特に秀でた所もございません、弟の夏侯覇の方が武勇に秀でております、曹彰様に必要なのは夏侯覇の方では?」

「夏侯覇もいずれ推挙したいと思うけど、二人に求める物は違うんだ。

私は夏侯衡に高祖劉邦様の腹心であった蕭何様のようになってもらいたいと思っているんだ。」

「私が蕭何様のように・・・」

「そうだよ、まずは兵站についてしっかり学んでもらう、その後は内政など学んでもらわなければならない事は多い、きっと大変な事だと思うが曹彰を支えてくれないか?」

「私にその大役が勤まるでしょうか?」

「出来ないと思ったら言わない、勿論努力は必要だけど、私は君なら出来ると思っているよ。」

「わかりました、陳宮様にそこまで見込まれてはお断りする言葉を持ちませぬ。

どうか曹彰様に推挙していただけますか?」

「勿論、曹彰入りなさい。」

俺は隣の部屋で待っていた曹彰を呼ぶ。


「夏侯衡、俺はまだまだ未熟だが、俺と共に学び、国の為、曹家の為にその身を捧げてくれないか。」

曹彰は入るなり夏侯衡の手を取り頼み込む。

「曹彰様、勿体無いお言葉にございます。

この身が果てるまでお仕えさせていただきます。」

二人は互いに曹家の未来を担う者である。

曹家の未来の為、この国の行く末の為にもはこの二人を俺がしっかりと育てなければならない。


俺は決意を新たにするのであった。

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