第256話 一区切り

「まあ、それからは呂布様を当主に曹操とやり合っていましたね。」

俺は昔話に一区切りを入れる。

「先生!憎き曹操はそれからどうなったのですか!」

「曹清お姉様が出てきてズルいです、曹憲も出たいです。」

「曹彰、憎きって、君の父上だよ。

それに曹憲様にお会いしたのは先程ですから登場しませんよね。」

「むー曹憲も出たいです。

陳宮様のお話に曹憲も参加したいです。」

「先生!続きは!」

曹彰は目を輝かせて続きをねだる。


「もう遅いから続きは今度にしようか。」

「「えー。」」

「それにここからは私と曹操の争いになるからね、質問だった何故曹操の所出ていったかって答えになったよね。」

「答えにはなったかも知れませんが気になります!」

「そうです、お話してください。」

二人は俺に詰め寄って来る。


「陳宮、少し話があるのだが・・・

曹彰、曹憲、何をしている?」

そんな時曹操が部屋に入ってくる。

「父上」

「お父様」

「二人とも陳宮に何を詰め寄っている?」

「それはその・・・」

「お父様が悪いんです。」

言いよどむ曹彰と違い曹憲は曹操を批難する。


「曹憲、何が悪いんだ?」

「陳宮様を斬ったり、遠ざけたり・・・

いっぱいいっぱい悪いことしたんです。」

「・・・陳宮、何の話をしてた?」

「いや、お前と袂を分けた時の話を少しな。」

「陳宮!何を子供に話してる。」

「いやぁ、世間でも知られてる事だし、いいかなと。

それに今後為政者になるには知って欲しい話でもあるからな。」

俺は曹彰と曹憲の頭を撫でる。


「確かに曹彰は知るべきかも知れんが曹憲まで伝える必要はないだろ。」

「そうは言うが曹憲様はかなり頭がいいぞ、戦略についてはよく理解しているようだ、それなら戦争の一面を知る機会を与えるのも大人の役目だろ。」

「とはいえなぁ・・・」

曹憲は曹操を睨み威嚇している、曹操といえど幼い娘が敵意を向けてくるのは少し心が痛い。


「曹憲様、曹操をそのような目で見てはいけませんよ。

私の考えはともかく曹操には曹操の考えがあったのです、どのような事柄も相手には事情があるのです。

自分の事情と相手の事情、それが交わらない時に争いが起きるのです。

その事をよく覚えておいてください。」

「・・・はい、陳宮様。

お父様ごめんなさい。」

曹憲は頭を下げる。

「怒ってないから大丈夫だ。

・・・だが、なんで陳宮にしがみついたままなのだ?」

曹操の言葉の通り曹憲は座る俺の膝の上に乗り、俺の胸元をギュッと握っていた。

「ここは安心できるのです。

陳宮様駄目でしょうか?」

「俺はかまいませんが曹操もいることですし、曹操の元に行かれては?」

「陳宮様がいいのなら、曹憲はここにいます。」

曹憲は俺にギュッと抱きついてくる。


「・・・」

曹操は無言で俺を見つめているのだった。

その横で曹彰は嬉しそうに笑っていた。

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