第255話 恩人に
「呂布殿、救援感謝致す。
私は陳宮と申します。」
俺は助けられた事に感謝を示す。
「俺はお前を助けた訳では無い、勇者として弱者を助けるだけだ。」
「弱者を助けるですか?」
「そうだ、それが勇者としての生き方だ。」
呂布からは嘘を感じない。
「呂布殿、失礼ですが呂布殿は以前養父丁原殿、そして、旧主董卓を害しました、それはどのような理由でしょう?」
「丁原は悪たる宦官を己の利の為に見逃した悪である。
また董卓も我妻を奪おうとした悪だ。」
俺は呂布の言葉を考える、確かに当時丁原は宦官の排除に動いていながら、完遂することは無く、以後の混乱を招いたとも言える。
董卓の横暴は天下に知れ渡っていた、呂布が董卓を成敗したことは悪い事ではない。
「私の質問に答えて頂き感謝致します。」
「勇者は弱き者を導く者である。」
俺は呂布から純粋な心を感じる、そしてその中にあるのは正義を成す心である。
そうで無ければわざわざ襲われている村に入り民を助ける必要なんて無い。
「呂布様、この者達を弔ったら貴方様をお連れしたいところがあるのですが?」
「いいだろう、だがその者達は?」
「私を守り命を落とした者にございます。」
「見事な死に様だ、致命傷といえる傷が一つだけではない、この者達は命を超えて戦う事の出来た勇者である。
勇者の弔いは勇者の務めでもある。
俺も手伝おう。」
「呂布様のような剛の者にそこまで言われて仲間達は光栄でありましょう。」
「勇者は勇者を知る、この者達が勇者である事はこの呂布の名において認めよう。」
俺は呂布の手を借り亡くなった者達を埋葬していく。
その間に呂布の連れであろう騎兵と馬車が集まって来ていた。
「呂布様、お一人で先行するのはお止めください。」
馬車から一人の美女が降りてくる。
「弱者が虐げられている声がした、勇者として駆けつけなければならない。」
「それでもです、皆で向かえば助けれる命も増えましょう・・・
あら、そちらの方は?」
「勇者に護られた者である。」
「陳宮と申します、この度呂布様に命を救われました。」
「そうですか、主人は話下手ですので会話は大変だったでしょう。」
「いえ、呂布様の高潔な御心がわかりました。」
「世間では誤解されておりますが、この人は純粋なんです。」
「よくわかります。」
「陳宮様は良い御方なのですね。
あら、私としたら名乗りもしないで、私は呂布の妻、貂蝉と申します。」
「貂蝉様ですか、かの王允様の令嬢とお聞きしております。」
「養女にございます、私も天下に悪評を流していますので、お耳汚しでしたでしょ?」
貂蝉が言う通り、世間では董卓と呂布をその美貌で罠に嵌め、呂布に董卓を斬らせた女性、酷く言えば悪女と噂される部分もあった。
「確かに評判は耳に聞こえてきておりました、ですが会うとその評判が嘘だと確信できました。
まったく噂とは当てにならない物ですね。」
「ふふ、噂通りの悪女かもしれませんよ。」
「悪女の方はそのように言われないと思います。」
「貂蝉、この者は信じれるものか?」
「呂布様、大丈夫です。
このお方は心に清らかな物がございます。
信をおいてもよろしいかと。」
「ならば信じよう。陳宮、お前が思う我が道を示せ。」
「え、えーと・・・」
俺は呂布の゙言葉に戸惑う。
俺は呂布を連れて曹操の元に向うつもりであった、だが呂布の道とまで言われると違う気がする。
「陳宮様、この人は口が何より下手なのです。
ですが大丈夫です、陳宮様が良いと思われる所にお連れください、この人は信じた者が与える道を進むだけですから。」
貂蝉からは呂布と共に進みどんな苦難であろうと受け入れる覚悟を感じる。
俺はそれほどの゙覚悟で道を示すつもりだったのか・・・
相手は命の恩人であり、仲間を勇者として丁重に扱ってもらったのだ、俺はその恩に報いる為に何が出来る。
「呂布様、呂布様のお力で天下の民をお救いになられる覚悟はございますか?」
「民を助けるのは勇者の゙役目である、天下の民が俺を求めるなら俺は天下の為にチカラを振るうのみ。」
「ならば向う場所がございます。
この陳宮、救われた命をかけて呂布様の道を作りましょう。」
俺の心が曹操から離れた瞬間でもあった・・・
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