第242話 頭の痛い問題

「えっ?ああ!そう言えば高幹の所に・・・」

俺は俺の妻を名乗り捕まった女性に会い、驚きと存在を思い出す。

「さっさと離しなさい!」

俺と面会した呂希は自身を捕まえている兵士に命令していた。


「この方は知り合いだ、捕まえている必要は無い。」

俺は兵士に命じて縄をほどかせる。


「全く!あんたは主家の娘になんて真似をしてくれるのよ!」

縄を解かれた呂希は俺を叱るように話始める。

「呂希様、お久しぶりにございます。」

「何が久しぶりよ!この私をこんな目に合わせておいて!謝罪しなさい謝罪!!」

「こんな目と言われましても、これが戦場のならいにございます。」

「何を言ってるの!あんたには私の味方をするように使者を出したじゃない!それなのに裏切って恥ずかしく無いの!」

「裏切るも何も、私は現在曹操配下にございます、高幹に付くことこそ裏切りになると思います。」

「なによ!お父様から受けた恩を忘れて曹操に尻尾を振ってるの!」

「恩を忘れた事はございません、ですが生きていくなら他に縁も出来てしまうのです。」

「うるさい!あんたはお父様の配下!そして私は主家の娘!わかる?」

呂希はあくまでも自分が上であると言って、俺を裏切り者となじる。


「先生、この痴れ者は誰ですか?」

曹彰の視線は俺をなじる呂希に対して非常に冷たくなっていた。

「この方は呂布様の娘で呂希様にございます、一応前妻となるのですが、陛下の名において離縁しております。」

「陛下の名において離縁した者が先生の妻を名乗るとは・・・

これは朝廷に仇なす者として斬っても構わないでしょう。」

曹彰からは怒りが満ち溢れているように感じる。

「お待ちを!女性が命乞いの為に口にした言葉を責めるのはあまりに酷い話かと、呂希様、馬車をご用意致しますので高幹のもとにお戻りください。」

俺は曹彰を宥めつつ、呂希を高幹のもとに送ろうと考える。


「高幹はもういいわ、并州なんて田舎に行きたくないし、私の馬車が転けても知らん顔で逃げだす男なんてこっちからお断りよ。」

呂希の中で高幹はもう過去の男となっており、興味を失せていた。

「さすればどうするおつもりですか?」

「あんたの妻に戻ってあげるわ、どうやら私が私らしく暮らすにはあんたの妻がいいみたいだからね。

あっ、でも勘違いしないで、私に指一本触れるのは駄目だから!

あんたに抱かれるなんて虫唾がはしるわ!」

呂希の発言には俺もドン引きである。


「呂希様、私とあなた様は既に陛下のお名前のもとに離縁が済んでおります。」

「なによ、もう一度結婚すればいいんでしょ?」

「そのような軽い話ではありません。」

「うるさい!あんたは私に従えばいいの!」

呂希は何を言っても聞こうとしない。


「はぁ、仕方ない、城内に一室用意してくれるか?ひとまずは落ち着くまで滞在してもらおう。」

俺は興奮して何も聞かなくなっている呂希を落ち着いて話せるようになるまで滞在出来るように手配する。


「最初からそれでいいのよ!」

呂希は自分の要求が通ったかのように満足気な表情を浮かべるのであった。

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