第241話 落城後

「曹彰、よく我慢したな。」

落城後、鄴の中で曹彰達と合流した俺は逃げる高幹と戦わなかった事を褒める。

「先生、やっぱり高幹を狙わない事が正解だったのですね。」

「正解だったのかはわからない、だが逃げようとする敵の退路を無くす事は敵が命懸けで戦い出す切っ掛けになりかねない、なら退路を少し開けその背を狙う方がこちらの被害が抑えられるからね。」

「・・・うう、自分はまだ未熟者です。」

俺の言葉を聞いて曹彰が落ち込む。


「曹彰?どうした?上手く出来てたじゃないか?」

「くく、曹彰は俺が止めたんだ。」

夏侯淵は少し意地悪く笑う。

「なるほど、お前がいたなら止めるな。

だけど曹彰、落ち込む必要は無い、部下の意見を聞き判断を下す事が総大将としての役割だ、曹彰はちゃんと意見を聞いて判断を下した、落ち込む必要なんて無いさ。」

夏侯淵がいたなら納得ではあるが、曹彰が判断出来た事は正しい事である。

「ありがとうございます。」

曹彰は俺に褒められ明るい表情が戻ってくる。


そんな最中、

「申し上げます、追撃戦の最中、そ、その陳宮様の妻だと名乗る女性がおりまして、どうしたらよろしいかご判断願えたら・・・」

「俺の妻?」

俺は首を傾げる、妻といえば曹清達であるが今回の戦には同行していない上に、追撃戦で捕まるような事は無いはずだ。


「なんだ、その痴れ者は!先生の妻を名乗るとは不届きな!」

曹彰は怒りをあらわにする。

「曹彰、落ち着きなさい、追撃戦の最中、女性が捕虜になったのなら嘘の一つでも言って身を守るのも一つの手段でしょう。

仕方ない、一度会いますので丁重に連れてきてください。」

俺は怒る曹彰を嗜めて、一度会うことにする。


嘘だと決めつけ放逐した場合、騙されたと感じた者達に酷い目に合わされかねない、力ない女性が被害にあるのは出来ることなら助けたい俺は一度会うことで助ける事が出来るならと面会することにする。


「おっ、嫁を増やす気か?」

夏侯淵はからかうような笑顔を見せる。

「増やす気は無い!」

「まあ、増やしても構わんが最初は曹清を孕ませろよ。

順番は大事だからな。」

「おい、曹彰の前で言う話じゃないだろ!」

「そうです、夏侯淵、一番が曹清である必要はありません、いっそ曹憲でも・・・」

曹彰の口から少し怖い言葉が漏れていた。

「曹彰、曹憲様はまだ子供ですし、そもそも妻でも無いですよ。」

「大丈夫です、ちゃんと教育しておりますので。」

「その教育はいらないからね、曹憲様は別の方に嫁ぐ事になるでしょう。」

「大丈夫です、先生と曹家の結びつきは多い方がいいですから。」

「曹彰!!」

この件に関しては曹彰の聞き分けが悪い、これまで何度も訂正するのだが、聞き入れてくれることはないのであった。

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