第239話 開門

「曹彰も派手に攻めるな。」

俺は状況を見ながら曹彰が激しく攻めたてている事に驚く、陽動であるのだが全力で攻める姿を見ると陽動とは感じさせない迫力があった。


「お前に良いところを見せたいのだろう、それでも負傷兵を早々下げているところを見るに兵の死傷者は思ったより少ないはずだ。」

俺の隣で張遼が説明してくれる。


「ならば良し、とはならないな、さて、曹彰が攻め疲れない前にこっちも行動に移す、魏越に連絡を。」

俺は侵入部隊に連絡を送り、城内に忍び込ます。


「張遼はいつでも行けるようにしておいてくれ。」

「了解だ、門が開いたら雪崩込んでやるさ。」

俺達は潜入部隊の結果を待つのであった。


「さて、そろそろ行くぜ。」

魏越が潜入部隊の指揮を取っていた。

周りの状況を確認しながら抜け道から部隊を城内に潜入させる。


「魏越、俺達は先に行って城壁を制圧する、お前は門を開けてくれ。」

「甘寧やれるのか?」

「愚問だな、内側に入れている以上簡単な事だ。」

「なら先に行け、俺は後続と共に門を開ける。」

甘寧は自身の部下二百は闇夜の中、北側の城壁に向かう。


「一大事にございます!」

「何事だ!」

「敵が侵入してきております!」

「なんだと南は破られたのか!」

「いえ、南はまだ持ち堪えておりますが・・・」

「ならば何処だ言ってみろ!」

「それは・・・」

「どこだ!」

「ここだよ!」

「ぐっ・・・」

甘寧は言葉を聞こうとして近付いた北門を守備する尹楷の口を抑え喉を剣で刺す。

それと同時に部屋にいた尹楷の部下で構成された北門の守備隊幹部達を甘寧配下の兵が皆殺しにする。


甘寧が尹楷を始末している中、城門の開閉装置を狙い魏越が襲撃していた。

「やれ周倉!」

「うおぉぉぉ!!」

堅く入口を閉ざした高幹軍に対し周倉の剛力で扉を破壊し中に進む。

「貴様ら何処の者だ!」

「何処も何も陳宮軍だな。北門を開門させてもらうぞ。」

「ふざけるな!北門を開かせる訳にはいかない、皆死ぬ気で守れ、必ずや援軍が来るそれまでの我慢だ!」

守備兵達は必死の防衛をするのだが援軍の来る気配は無い。


「何故だ、なぜ来ない!」

一人また一人と討ち取られ数を減らしていく、それなのに味方に動く気配がない。

「甘寧もうまくやったみたいだな。

それじゃ俺達も本気で殺るか。」

言うが早い、魏越は目の前の敵を斬り刻んでいく。

「なっ!」

「一般兵如き、物の数ではない、降るなら命の保証ぐらいはしてやるが?」

「誰が降るか!ここには家族が住んでいるんだ、敵を中に入れる訳にはいかないんだ!」

「そうか?今降るなら家族の命も保証しよう。

俺達は門を開けたいだけだし、敵は高幹だ。

家族が住んでいるということは、お前達は袁家の兵士だったのだろう?

高幹に尽くして命を捨てるか?」

「・・・」

「俺達陳宮軍は略奪、凌辱をしたりしない、たとえ曹操の命令であろうともだ。

今降るなら、俺が口利きをしてやる、どうだ?」

「本当に家族を助けてくれるのか?」

「嘘をつく気は無い、敵対しなければ命は取らない。」


「・・・わかった、降ろう。」

「隊長!!」

「皆、武器を捨てろ、我々は高幹の部下じゃない、反乱者の高幹に従う必要などないのだ。」

隊長が剣を捨てる姿に兵士達も剣を捨て降る。


「さて、開門だ。」

魏越の命令で門が開かれるのであった。

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