第236話 下準備
「袁煕、ここから城内に入れるのか?」
俺は鄴の北東、城から少し離れた場所にある涸れ井戸に来ていた。
「ああ、父上が作った隠し通路の一つだ、北方の城壁の内側に続いている。
だが通路は狭く多くの兵を向かわすには向かないが・・・」
「抜けた先は人気は無い場所か?」
「ああ、廃墟に近い古民家の裏庭に続いている。」
「魏越、調査を頼む。」
俺は一度抜け穴の確認の為に調査を行う。
「陳宮、抜けた先は話の通り古民家の裏庭だったぜ、あそこなら人気も無いからある程度は兵を潜ませれるな。」
魏越から調査結果を聞く。
「ならば闇夜に乗じてなるべく多くの兵を送り、早朝、南方からの攻撃に合わせて北方の門の開門を狙うか。
魏越、甘寧やれるか?」
「任せろ。」
「俺の得意分野だ。」
かなり危険な作戦ではあるのだが魏越と甘寧はあっさりと了承する。
「危険だがいいのか?」
「お前の作戦だ、それなりの勝算があるんだろ?」
「まあな。」
「なら問題無いな。」
魏越は俺の無茶に慣れているが、甘寧はどうだ?
「城に忍び込むなど以前からやっている、それがただデカいだけじゃないか。」
甘寧は困難な事こそ燃えるタチである、天下に名を轟かす鄴に挑む事を楽しそうにしていた。
「陳宮様、俺にもやらせてくだせえ。」
周倉が志願してくる。
「周倉か、確かにお前の剛勇は今回の作戦向きだな、魏越と共に向かってくれるか?」
「有難い、手柄を立ててきますぜ。」
魏越と周倉は合図とともに手勢を率いて城内に向かっていく事になる。
俺は曹彰に作戦を伝えに来ていた。
「曹彰元気そうだね。」
「先生!よくお越しくださいました、さあこちらへ、誰か茶を用意しろ。」
曹彰は俺を上座に座らそうとするが・・・
「曹彰、上座は君だよ。
曹操の後継者であり、今回の総大将だ、敬意を払ってくれるのは嬉しいがそこを譲ってはダメだよ。」
「弟子として先生に敬意を払うのは当然です、ですが先生がおっしゃるなら・・・」
曹彰は渋々上座に座る。
「さて曹彰、鄴を落とす作戦だけど・・・」
「やっぱり先生には別の作戦があるんですね!」
曹彰は目を輝かせている。
「別の作戦があるのに違いは無いが、別段私が優れている訳ではないからね。」
「そんな事はありません、私だけでなく夏侯淵叔父上も、事前に相談した郭嘉も包囲する作戦しかありませんでした。」
「まあ、鄴を攻略するには包囲作戦が正攻法だからね。」
「でも先生は違う作戦でいくと?」
「条件が揃っているからね、内容を話してもいいかな?」
「勿論です!」
「まず前日の夜から夜通しで曹彰の軍と私の軍で鄴の東西から攻撃を仕掛ける。」
「総攻撃ですか?」
「いや、一軍で攻めかかるぐらいでいい、曹彰の総攻撃は翌早朝、日が出る前に南側から頼む。」
「先生の総攻撃は?」
「私の部隊が夜中の内に北側城内に忍び込む手筈になっている、南側に敵が集中したところで門を開き一気に城内に雪崩れ込む。」
「城内に!そのような事が出来るのですか?」
「やるつもりだよ。」
「わかりました、先生の作戦に従います。」
曹彰は迷うことなく俺の作戦を受け入れるのであった。
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