第235話 曹彰出陣

「陳宮が高幹に戦を挑むのか。

・・・夏侯淵、軍を率いて高幹を討ち、鄴を落としてくるのだ。」

曹操は陳宮の動きに合わせて軍を動かす事を決める。

だが先の敗戦の影響もあり、西の涼州の馬騰の動きが怪しい上に南の劉表もどう動くかわからない状況である、曹操自身は許昌にて様子を見る必要がある為、高官の相手は夏侯淵に任せようと考えていた。


「曹操、大将は曹彰にしても構わないか?」

「曹彰に務まるか?」

「俺が副将として支えるから大丈夫だろう、それにお前の後継者として経験を積まさないといけないからな。」

「お前が支えてくれるなら安心だが・・・」

「なに、曹彰は充分軍才がある、曹丕みたいな事にはならないだろう。」

夏侯淵は曹彰を総大将にすることで後継者の地位を安泰に出来ると考えていた。


「夏侯淵がいいなら任せよう、駄目だと思ったらすぐに指揮を代わってくれ。」

「任せておけ。」

夏侯淵は曹彰を総大将に黄河を渡る。


「申し上げます、高幹軍は鄴に籠城している様子にございます。」

「まあ、そうなるか、曹彰どうする?」

報告を受け夏侯淵は曹彰の判断を聞いて見る。


「まずは城を包囲し、兵糧攻めにしつつ、周囲を制圧していく、先生が来たらお力をお借りして落とせばいい。」

曹彰の判断は悪くない、堅城で名高い鄴を力攻めしても被害が出るだけだ、包囲し、兵糧攻めをしつつ内部に揺さぶりをかける、それが正攻法なのだ。


「ならば、作戦の指揮を取ってみろ。」

「はい!」

夏侯淵は曹彰に布陣を任せる。


「城の包囲は于禁に任せる、徐晃は周囲の制圧を呂虔は偵察隊を周囲に放ち警戒網を構築せよ。

本陣は私と夏侯淵で于禁の後陣として待機する。」

曹彰は諸将を集めて指示を出す。

「特に呂虔、そなたの偵察隊が我等の命綱である、功を焦らずしかと職務に励んでくれ。」

「勿体無いお言葉にございます。」

偵察隊とは軽く見られがちな職務である、それを諸将が集まる場にてあえて口にする事で職務の重要性を伝え、職務に挑んでもらおうとの配慮であった。


「良いか、高幹は西の并州が本拠地の敵だ、いつ援軍が来るかわからない、備えを怠るな。」

「「はっ!」」


曹彰の指示は夏侯淵からしても満足のいくものであった、別段指示をせずとも曹彰は充分に職務をこなしていたのであった。


「曹彰が総大将か。」

俺は曹彰と合流した時に夏侯淵から聞かされる。

「見事に指示を出しているぞ。」

「それは頼もしいな。」

「お前の指導が良かったみたいだな、以前の曹彰なら力攻めを言っていただろう。」

「力攻めも時と場合によっては有効なのだけどね。」

「少なくとも鄴では向かないだろう。」

「・・・さて、なら曹彰くんに先生として良いところを見せますかね。」

「おい陳宮、なんだ今の間は!まさか力攻めをする気か!」

「まあ、ゆっくり見てろ。」

俺は曹彰の戦に華を添える為に軍を動かすのであった。

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