第233話 高幹からの使者
高幹から俺に使者がくる。
「高幹様からの使者として参りました、応劭と申します。」
「私が陳宮だが、高幹殿はどのようなご要件ですか?」
「陳宮殿の主君から親書をお預かりしております、まずはそれをお渡ししたい。」
「私の主君?私の主君は曹操になるはずだが、貴殿は高幹殿の使者であろう?」
応劭の言い分がよくわからない。
「何をおっしゃる、貴殿は呂布殿の忠臣ではございませぬか、曹操など主君の仇ですぞ、何故恨みを忘れ仕えておられる!」
「確かに私は呂布様を主君と仰いだ、だが無関係な貴殿に口を挟まれる覚えはない。」
「無関係ではありませぬな、さあ親書を見てから今一度お話致しましょう。」
失礼ではあるが、この親書に何があると言うのか・・・
俺は書状を開き一読する。
「これは!」
「どうした陳宮?」
俺が驚きの声を上げると張遼が気になっていたのか書状を覗き込む。
「これはなんとも・・・呂希様の手紙か。」
「ああ、どうやら高幹の妻になったようだな。」
「おわかりいただけましたか、呂希様がこちらにおられる以上、陳宮殿は我等に味方するべきなのです。」
応劭は声高に話す。
「ぬぅぅぅ・・・」
俺は考える、呂布への忠節、曹清への想い、いやそれだけではない今いる仲間の半分は呂布軍だ、彼らの想いも考えるべき・・・
「何を悩む陳宮?」
その反面張遼はサラッとした表情を浮かべている。
「へっ?何でお前は悩んでないの?」
「今更だろ?俺達の忠誠は既にお前に捧げている、呂布様には悪いが娘というだけで従うつもりなど無い。」
張遼の言葉に少し拍子抜けする。
「そもそもだ、呂布様に忠誠と言うなら曹清との婚姻は駄目だろ?
それを俺達が受け入れているんだ、少なくともお前は俺達に気を使う必要なんて欠片も無い。」
「これは忠義の将と言われる張遼殿の言葉とは思えませぬな、主君と仰いだ以上、その主家の為に命を掛けて従うべきでしょう。」
「黙れ、俺は別段忠義の将などと言うつもりなど無い、呂布様に従ったのはあの人並み外れた武の行く末が見たかったからだ!」
「ならばこそ、今一度呂希様の下で行く末を見るべきでしょう。」
「呂布様が後を託したのは陳宮だ、ならば我等は陳宮の意見を尊重する。」
「くっ!ならば陳宮殿、貴殿は裏切り者として史に名を刻む気はありますまい。」
「俺の名など既に裏切り者として名を刻んでいるからな、今更だな。
お前達、いいんだな?」
俺は張遼、高順、成廉、魏越の呂布軍からの将を見る。
「問題無い、お前と離縁した時点で見限った。」
高順は端的言う、高順の忠義心からすると出来れば事を荒らげたくは無いのだろうが、敵の妻になっている以上、覚悟を決めたのだろう、言葉に決意を感じる。
「そもそも俺はあまり接点無かったしな、陳宮の好きにしな。」
魏越としてはどちらでもいい、呂希に味方する理由が無かった。
「俺も同じだな、いやむしろ呂希は俺達を蔑んでいたからな、俺としては敵になってくれて礼を言いたいな。」
成廉は多少なり恨みがあるようだ、敵に回しても問題無いと考えている。
「意見は纏まったみたいだな。」
旧呂布軍は既に呂希に味方する気は無いようだ、俺としては命まで取るつもりは無いが、敵として戦わなければならないのなら加減するつもりも無い。
「お、お待ちを!ならば現状を考えていただきたい!」
応劭は呂布軍が敵対的な発言をしている事に危機感を感じ別の方向からのアプローチを開始する。
「現状か?」
「そうです、陳宮殿は既にチカラを持ち過ぎている、このまま曹操が勢力を伸ばせばどうなるか!
間違い無く粛清が待っているに決まっています!
ここは我が主、高幹様と同盟を結び、曹操に当たるべきでは無いのですか!」
「俺達を臣下にしようとしておいて虫がいい話だな。」
高順は少し切れそうになりながら話しかける。
「落ち着け高順、相手は文官だ、お前がやる必要は無い。
応劭殿、高幹殿は卑怯な手段を用いて袁譚殿を始末し、袁家の跡目を奪い取りました。
そのような行為をする者に天が民が味方するはずが無い。」
「あれは袁家の行く末を考えての行為です、それこそ他家の陳宮殿に言われる筋合いは無い。」
痛い話なのか応劭は少し声を荒げる。
「ならば私が言おう!この簒奪者め!」
末席に目立たぬように控えていた袁煕が前にでる。
「え、袁煕だと・・・」
どうやら袁煕が俺の所に来ている事を知らなかったようだな、高幹の情報網の脆弱さを感じる事が出来る。
「他家ではない俺なら言っても良いのだろう、高幹は親族でありながら主家を裏切った裏切り者だ!」
「袁家の誇りも忘れ、命惜しさに敵に降るような恥知らずに言われたくない!」
袁煕と応劭が言い合いを始める。
「どうやら、我等がわかり合える事は無さそうだ。
応劭殿、使者の役目ご苦労、高幹殿には弓矢にて話し合おうとお伝え下さい。」
「あっ・・・お待ちを!
今のは違うのです、今一度お話を!」
「私は我が陣営に降ってくれた者をはずかしめるつもりなど無い。
袁煕の名誉の為にも高幹殿と戦をさせてもらう。
さあ使者がお帰りだ!」
俺の言葉に応劭が追い出される。
「さて、戦となるが、袁煕戦えるか?」
「もちろんだ、高幹の首は俺が取る。」
「無理はしなくていいから、冒白袁煕の事は頼みます。」
「私の夫ですのでお任せください。」
「皆も戦の準備だ!」
俺達は高幹に向けて戦の準備に移るのであった。
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