第232話 曹操に連絡

曹操のもとに陳宮から連絡が入る。

「陳宮が袁煕の投降を受け入れたのか。」

「曹操様、袁煕をこちらに引き渡させるべきではないでしょうか?」

「陳羣、それをすると陳宮が反発するのが目に見えている。」

「ですが、袁家は曹丕様にあのような酷い仕打ちをした一族、袁紹が死した今、その息子の袁煕に罪を償わせるべきでは?」

「陳羣、お前が曹丕の事を思って言っているのはわかる、だがこれは天下国家の話だ、そこに私情を挟むべきでは無い。」

「出過ぎた真似を致して申し訳ありません、ですが家臣の中にはそのような意見があることをお知りください。」


廃嫡した曹丕のもとには未だ擁護する動きがある、擁護する者達にとって陳宮は警戒すべき相手であり、陳宮と敵対している曹丕が旗印として手頃だったのだろう。

連名で意見書を提出、企みの全てが夏侯充の策略であり、心身共に傷ついていた曹丕に夏侯充の企みを阻止するチカラが無かったのは明白、騙された事に罪が無いとは言えないが廃嫡は行き過ぎだと、廃嫡を取り消さそうとしていた。


「荀彧、どう思う?」

「確かに夏侯充の企みなら廃嫡は行き過ぎかと思いますが、それでも陳宮のチカラを考えるなら致し方ない所があるかと。」

「荀彧殿、陳宮に弱腰でどうしますか!

これ以上チカラをつければ曹家の仇となるでしょう、今のうちにチカラを削る事を考えるべきでは?」

「既にチカラをつけているからこそ、懐柔すべきなのだ、それに曹清様に御子が出来れば曹操様の御孫となる、そうすれば陳宮の勢力も曹家の物ではないか。

今必要以上に反感を買い離反をさせる訳にはいかない。」

「なれど!」

荀彧と陳羣が言い争いになるところで曹操が間に入る。


「落ち着け陳羣、俺としても陳宮のチカラを削るつもりは無い。」

「曹操様!」

「陳宮は意味も無く裏切るような漢ではない、ならばこそ曹彰の後見人として後ろ盾になってもらうつもりだ。」

「まさか曹操様は曹彰様に後を継がせると言うのですか?」

「他に誰がいる?」

「曹丕様がおられるではないですか、後を継ぐのは年長者からと決まっております。」

「曹丕は既にその器量不足から廃嫡したのだ、後を継がせる訳にはいかん。」

「ですが曹操様、曹丕様の廃嫡の撤回を求める声も多くあります、今一度ご再考を!」

「ならん、それをすると陳宮に合わせる顔が無い。」

「曹操様!」

「下がれ、一度頭を冷やしてこい。」

曹操は陳羣の言葉を取り上げる事は無かった。


「曹操様、曹丕様の事は置いておいても、陳宮がチカラをつけ過ぎるのは些か問題かと。」

「その為に司馬朗を送り込んだ、誠実なあの男なら謀反を起こさないように立ち回るはずだし、こちらに情報を送ってくるだろう。」

「なるほど、確かに司馬朗殿は裏切るような御人ではありませぬな。」

「まあ陳宮自身、裏切るような事は無いだろうがな。」

曹操は軽く笑う。


結局のところ、曹操は陳宮を信じているのだ、娘の曹清の一件も無事に片付き、陳宮の正室となった、今の状況で裏切るような漢で無いことは曹操が一番理解しているのであった。

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