第231話 袁家のスキ

「高順、冒白殿を丁重に持て成してくれ、あとついでに袁煕殿もだな。」

「どちらが大切かわかりやすくていいな、冒白が大事か?」

「今後を考えると烏桓族との繋がりは大事にしたいな、下手に恨まれると後日の統治に響きそうだ。」

俺は今後、袁尚、高幹を倒したあと北方の騎馬民族と争わないでいいように配慮する必要を感じていた。


「あと、曹操に袁煕を保護したことを伝えてくれ。」

「わかった、誤解を招くのも良くないからな。」

「まあそれもあるが、北を制する時が近いな。

曹操もわかっていると思うが袁家を滅ぼせる隙が出来た。」


これまで袁紹は強大な勢力を持っていた、多少なり削る事は出来ていたがそれでも容易く滅ぼせる相手では無かったが、高幹、袁尚、袁煕の三者に分かれ、今また袁煕を滅ぼし、二者で睨み合う状況を生み出している、そんな状態まで落ちたのだ。

かつての袁紹のチカラは半減以下になっている。


俺達が見逃してやる必要は無い、停戦の約定が切れた時が袁家を滅ぼす時になる。

「まあそれまでは謀略戦だな、両者に揺さぶりをかけるか。」

「陳宮様、その役目私に任せてもらえませんか?」

一人の男が志願してくる。


「君は司馬朗殿の弟の司馬懿殿でしたね、たしか仕官するのが嫌で司馬朗殿の家で隠遁なされていると聞き及んでおりましたが。」

「はい、兄の家で居候をしていたのですが・・・」

「どうかなされたのですか?」

「はい、嫁に世話になるなら兄の手伝いぐらいしろと言われまして、軽く仕事を手伝わせてもらったのですが・・・」

「なにかありましたか?」

「何ですかあの書類の山は!あんなの一人でこなしていたら死んでしまいますよ!」

「・・・うん、そうだね。」

俺は死んだ目で答える。

どうやら俺以外も書類の山に埋もれているようだった。


「しかもですよ、陸遜殿なんか、『君、仕事が早いね、これも追加で頼む。』なんてご自身のお仕事まで渡してくるんです。

兄に言っても、『新参者で下の人間は仕方ないのだ、嫌なら偉くなりなさい』って笑うだけなんです。

それなら偉くなって陸遜殿に仕事を押し付けるんです!

陳宮様、必ずや成功させますので袁尚、高幹への二虎競食の計、及び各陣営への寝返り工作をお任せください。」


司馬懿の目に決死の覚悟が見られる、それほどまでに仕事に追われていたか・・・

俺は目頭が熱くなる。


この司馬懿という男の評判は高い、司馬朗の兄弟は聡明で名高いのだが、その中で一番の切れ者と言われているのだが、曹操の下で働くを良しとせず病気と言って仕官を断る気難しい所もある。

その男が自ら志願して来たのだ、やらせてみるのも面白いかもしれない。


「わかりました、司馬懿殿にお任せします、必要な物があれば申し出てください。」

「ありがとうございます、必ずや大功を上げて見せましょう。」

司馬懿はその日から熱心に取り組む姿が見受けられるのであった・・・

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