第229話 袁煕対高幹

「袁尚が私の城を落とした?

何かの間違いではないのか?

今、我等が倒すべき相手は高幹のはずだ。」

「いえ、それが・・・

多くの情報が届いており、落城は間違い無いかと。」

「そんな馬鹿な事が・・・ 袁尚は何を考えている?」

袁煕は混乱する、兄弟仲が悪いとはいえ、高幹は共通する敵のはずだ、それなのに何故こちらを攻撃する。

袁尚の考えが理解出来ない。


「袁煕様、考えるのはあとです、今は生き延びる事を優先しなくては!」

袁煕の妻になった烏桓族の姫、冒白が袁煕を叱咤する。

「生き延びるとはいえ、どうすればよい、私の城が奪われたということは後方は既に袁尚の支配下だ、引き上げ袁尚と戦をするにも高幹が私達の後ろを攻撃してくるのは目に見えている。」

「・・・生き残る為には前に出るのです、真っ向からの戦なら烏桓は負けたりしません。」

「前に抜けてどうする、行先は高幹の支配地だぞ。」

「まずは戦場から離脱するのです、そうしないと何も出来ません。」

「しかし・・・」

「話している時間はありません、勇敢なる烏桓の兵よ!我等は今死地にいる、だが恐れることは無い、我等烏桓の前に敵は無し!

目の前の敵を突っ切るぞ!

私に続け!」

冒白は自ら先頭に立ち軍を率いる。


「姫様を一人にさせるな!

全員続け!」

冒白に続き烏桓兵も高幹軍に向かい突撃を開始する。

「ま、まて、冒白、私も行く。」

袁煕も冒白を追い、烏桓兵に混ざり逃亡戦を開始する。


「なんだと突撃してくるのか!」

袁尚が城を落とした事は既に高幹の耳に届いていた、城を落とされた袁煕は退却して袁尚と対決するしかないはずだった。高幹にとって前に突撃してくるのは想定外であった。

「防げ!高幹様に近づけるな!」

高幹を討たれれば全てが終わってしまう、高幹軍は高幹を守るために全員で守りをかためる。


「今です、全員離脱しますよ。」

冒白は高幹軍を躱すように軍を動かし、駆け抜けていく。


「くっ、逃がすな、追撃するのだ!」

高幹は袁煕の狙いが自分で無かった事に気づいたのだが、守りを固めた後であり、すぐに追撃にうつれない。


「追え!逃がすな!」

「姫様を守れ!」

烏桓兵達は小隊規模で反転し、攻撃にうつる。

「くそっ!その程度で!」

当然の如く、小隊などすぐに壊滅してしまう、だが烏桓兵は高幹軍の先頭の足をわずかでも止める事が目的であり、それは達成されていた。


その後、後方の部隊こそ壊滅させたものの、袁煕を含む本隊を逃してしまうのであった・・・

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