第227話 甄氏と美鈴

「美鈴大丈夫?」

美鈴の疑いがはれ面会できるようになると甄氏は美鈴の所にきていた。

「はいぃぃ・・・きもち良かったですぅ。」

「ちょっと、大丈夫なの!何をされたの?」

「なにって・・・そんなの恥ずかしくて言えません。」

美鈴は思い出したのか顔を真っ赤にして首を振っていた。


「ちょっと、心配になるじゃない。」

「甄氏様もしてもらったらわかりますよ。」

「してもらう訳にはいかないわよ、私は陳宮様の側室なんですからね。」

「そうでした・・・」

美鈴は心ここにあらずといった感じでポワポワしている様子だった。


「美鈴、資料はできているか?」

「張遼様、此処にあります。」

「おや、甄氏殿が来てましたか、失礼。」

「いえ、お役に立てているなら・・・」

「ええ充分に、美鈴、甄氏殿とゆっくりとしているがいい、私は資料を持って陳宮の所に行く。」

「ありがとうございます。」

張遼は美鈴の書いた資料を持って行く。


「張遼様の信頼を得たの?」

「はい、私が知っていることを話したら待遇が変わりまして、今では優しくしてくれているんです。」

美鈴は嬉しそうに頬に手をあてクネクネしている。

「まあ変わり者の貴女が受け入れてもらえたなら私としても嬉しいわ、貴女は得体の知れない事をすぐに始めるからみんな不気味がっていたのよ。」

「甄氏様だけが態度を変えませんでしたね。」

「まあ、貴女は貴女だし、それこそ昔から知っているからね。」

甄氏は子供の頃、みんなが不気味がっていた、動物を煮て得た油から石鹸を作り上げた事に、逆に関心を持ち、自分の侍女にしてから美鈴を友人として接してきた、少々変な事を仕出かすが根が悪くない事も知っている。


今回は陳宮の、いや張遼の不興を買ってしまったが無事切り抜ける事が出来て良かったと安堵していたのだった。

実のところ陳宮に枕元で何度も助命を願い出ていたのだが、それを美鈴に伝えるつもりも無かった。


「甄氏様、私は張遼様の信頼を得ました、ここからが私達のターンですよ、私も応援しますので陳宮様の子を一番に授かりましょう」

美鈴としても自分を保護してくれていた甄氏に恩を感じていた、本来ならもっといい相手をとは思うものの、現状を考えると陳宮の寵愛を受けるのが甄氏の幸せにも繋がると考える。


陳宮の信頼厚い張遼の支援があれば閨の回数を増やす事も出来るのではないか、そして、自分の価値が高くなれば更に交渉出来る材料に・・・


甄氏と美鈴、互いに思い合える素晴らしい主従関係を結べていたのであった。

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