第220話 曹操陣営

夏侯充の死を不審に思うのは陳宮達だけでは無かった。


「曹休が陳宮の味方をするとは思えん、何か裏があるのではないか。」

夏侯淵は曹休と陳宮の関係性から考え味方をするとは思えなかった、その為関係者を探すのだが・・・

「誰も見つからない?

当日お仕掛けてきた者もいたのだろう?」

「はい、それが宮殿に上がれる者でお仕掛けてきた者はおりません、それどころか宮殿にきた記録すら見つからないのです。」

「当日の警備をしていたのは近衛か・・・

曹純に聞いてみるか。」


夏侯淵は曹純を訪ねる、曹純は曹仁の弟だが曹仁と違い思慮深く、道理をわかっている男だ、今の状況で安易に陳宮と敵対する道を選ぶはずがない。

夏侯淵は曹純を信じて、自分の考えを話していた。


「つまり、夏侯充が死んだのは曹休の仕業という訳か?」

「ああ、もっとも夏侯充自身が陳宮を恨んでいたからな、曹休は協力者といったところか?」

「無い・・・とはいえんな、俺も事が起きたときは曹丕様を別室に案内していた時だ、現場の指揮権は曹休に預けてあった、その時に何かした可能性は否定出来ん。」

「お前の方から調べて貰えないか?」

「勿論だ、これは近衛としての失態だ、事と次第においては曹休を斬る。」

「お前ならそう言うと思った、あと陳宮と曹清の身辺につけるのはお前の息がかかった奴を頼む。」

「わかっている、それに全兵の身辺について改めて調べる、個人の好きにさせてたまるか。」

曹純はこの日から近衛の再編成に取り掛かるのであった。


「夏侯惇殿、此度は当家との婚姻目出度く思う。」

程昱は改めて夏侯惇の屋敷を訪ねる。

「程昱・・・嫌味のつもりか?

残念な事に夏侯充は亡くなってしまった、申し訳ないが婚姻は破棄に・・・」

「何を言っておられる、夏侯惇殿のご子息は夏侯臧ではありませぬか。」

程昱は娘の縁談を纏める為なら更に下の子供でも構わないと考えていた、夏侯充の事もあり引け目のある夏侯惇に断る事は出来ない・・・


「程昱、夏侯臧はまだ8つ、程育殿と結ばせるには少々歳の差がな。」

「娘は構わないと申しております、夏侯惇殿、娘は夏侯充のせいで名が堕ちてしまいましたのです、どうか責任を取ってもらいたい。」

「・・・わ、わかった。そちらが良いと言うのなら俺が反対する理由は無い。」

「それは目出度い、今後も当家と深く結びつき曹操様をお支え致しましょう。」

程昱は縁談が纏まったことに上機嫌となり帰っていく。


「夏侯臧、すまない・・・」

夏侯惇の心の傷は増えていくのであった。

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