第218話 夏侯充の死
「曹操様、曹清様を誘拐しようとした夏侯充を始末してまいりました。」
曹休は夏侯充の死亡を報告しに来ていた。
「よくやったと言いたいが生きて捕まえる事はできなかったのか?」
「曹操様、良からぬ事をたくらんだ者とはいえ、夏侯惇様のご子息、その武勇を思えば簡単に捕まるはずが無く。」
「そうであるな、夏侯充とて容易く捕まる訳が無いか。
夏侯充の遺体は夏侯惇に渡す、連絡をしてくれ。」
曹操は命令するものの肩を落としていた・・・
曹休は命令通り夏侯惇に連絡を入れ遺体を引き渡す。
「夏侯充、この愚か者が。何故陳宮を恨み曹清に固執したのだ・・・ お前の人生はこれからであっただろう・・・」
夏侯惇の瞳から涙が溢れる、
「夏侯惇様、夏侯充は最期まで勇ましく戦っておりました。
その武勇に手加減することは出来ませんでした。
私も職務上、戦いましたが曹清様を助けようと思う気持ちでは同じだったので・・・」
曹休は瞳から涙を流す、生前二人が仲良くしていた事は夏侯惇も知っていた、友と呼べる者を殺さねばならぬ気持ち、夏侯惇は曹休の悲しみを感じていた。
「曹休、お前は間違っていない。
愚かな夏侯充が悪いのだ。
お前も曹清を助けようなどとは思わぬ事だ。」
「夏侯惇様、それでよろしいのですか!夏侯充が命を掛けてやろうとしたのです。
・・・たしかにやり方は悪いと思います。
ですが、その想いに間違いは無いはずです!」
「間違っている、曹清は陳宮の下に行くのでいいのだ、お前達若い者は曹清を被害者かのように見ているようだが、陳宮と結ばれる事が曹清の為にも曹操の為にもなる。
悪いことは言わない、曹休も曹清を助けるなどと思うな。」
「夏侯惇様!」
曹休は夏侯充の死を利用して夏侯惇を仲間に引き込もうとしたものの不発に終わる、夏侯惇は嫡男の死に心を痛め静かに喪に服すだけであった。
「陳宮どう見る?」
「曹清を連れ去ろうとした侍女は曹休の命令と言っていたそうだ、さしずめ誘拐に失敗したから夏侯充に全てを背負わせたということだろう。」
事の顛末を聞いた俺は曹休に疑いの目を向けていた。
だが、曹清を案内していた侍女は翌日死んでいるのが確認され、過去に夏侯充と懇ろの関係になっていた事が発覚していたが、曹休との繋がりがハッキリとしない、そのうえ俺達が斬った近衛兵も夏侯充と個人的に繋がりのある者達だった、曹操陣営は夏侯充の犯行ということで結論が出ていた。
「曹清様、許昌において信じれる者はロクにおりませぬ、くれぐれも用心なされてください。」
「わかってます、まさか近衛兵が信じられないなんて・・・」
「曹休の手がどこまで回っているかわかりませんからな。
成廉なるべく早く引き上げるぞ。」
「おう、さっさと帰りたいものだ。」
成廉は連れて来た兵士を指揮して厳戒態勢を取っている、兵士への負担も考えるとなるべく早く帰還したいところだった。
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