第217話 夏侯充の命は
「夏侯充、どうしたのだ、その姿は!」
入口ではなく、窓から入ってきた上に、びしょ濡れでケガまでしている夏侯充に曹丕は目を丸くする。
「すぐに手当の者を呼ぶ!」
「お待ち下さい!」
「何故だ、ケガをしているのだろう。」
「いえ、今私は追われているのです・・・」
「追われるだと?夏侯惇の息子であるお前が追われるなど無いだろう?」
「・・・陳宮に嵌められました、曹清様をお助けしようとしたところに伏兵に襲われ、今や逃げるしか無い身になってしまいました。
曹丕様、どうか曹操様に取りなして頂けないでしょうか?」
「父上に取りなしか・・・」
曹丕は夏侯充を助けたい気持ちはあるのだが曹丕自身怒りをかっている、今取りなしなど出来る状態ではない。
「曹丕様!どうかお願いいたします!」
だが夏侯充からすると命がかかっている、必死に頼み込む。
「・・・わかっ」
「なりませんぞ、曹丕様。」
曹丕が何とかしようと同意しようとしたところに曹休が現れる。
「「曹休!」」
夏侯充と曹丕の声がかぶる。
「曹休よ、このままだと夏侯充が死んでしまう、曹休からも助命を願えぬか?」
「曹丕様、このたび曹清様をお助けしようと謀を用いましたが、陳宮によって破られてしまいました。
ここは夏侯充に全ての責任を背負わせましょう。」
「・・・なに?」
「曹休!貴様、俺を売るつもりか!ゴホッゴホッ!」
夏侯充は刺された事と忘れ大声を上げ咳き込む。
「曹丕様、誰かが責任を取らねば収まらぬのです。
曹操様のお怒りを買われた事も夏侯充に誑かされた事に致してこの場を収めましょう。」
「・・・父上の怒りが収まるだろうか?」
「すぐには難しいかも知れませぬが、落とし所にはなると思います。」
「曹丕様、誑かされてはなりませぬ、曹休が画策した策で失敗したのでございます。
ましてやこの男は俺に責任を押し付けて始末しようとしたのです。
始末するなら曹休にすべきだ!」
「うるさいぞ夏侯充、捕縛せよ。」
曹休は側近に命じて夏侯充を捕縛する。
「離せ!離さぬか!
曹丕様、どうか曹休に誑かされぬよう!」
「黙れ。」
曹休は剣を喉に差し込んでいく。
「ゴホッ!ぞ、ぞうぎゅ・・・」
夏侯充は絶命する。
「夏侯充!!」
「曹丕様、曹操様の後を継ぐなら非情にならねばならぬ時もございます。
死んだ夏侯充の為にもその死を最大限まで理由すべきです。」
「・・・曹休、お前に任せる。」
「お任せあれ、必ずや曹清様をお救いし、曹丕様を後継者にして差し上げます。」
「頼りにさせてもらう。」
「はっ。」
曹休は夏侯充の亡骸を持って曹丕の前から姿を消す。
曹丕は死んだ友、夏侯充を思い出し涙を流すのであった・・・
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