第211話 曹丕現る

「どけ!どけ!姉上!これはいったいどういう事ですか!」

夏侯充が誘拐作戦を準備している中、曹丕が結婚式に乱入してくる。

「曹丕、あなた部屋から出れたの?」

「姉上を助ける為だ!」

曹丕は堂々と宣言するが周りの眼は白いものがある。


先日までならいざ知らず、先の戦以降、陳宮の手柄が大き過ぎ、曹清の噂は表面上鎮静化し、陳宮と曹清の結婚を認める動きが強くなっていた。


「さあ、姉上、そこの色ボケから離れてください!」

「曹丕!貴方は何を言っているの!」

「何をとはなんですか!姉上が好きなのは夏侯充でございましょう、やい陳宮!歳も身分もわきまえず姉上を娶ろうなどとは恥を知れ!!」

「曹丕何てことを言うの!

陳宮様、違いますから、私は夏侯充に何の想いもありません。」

曹清は青い顔をして俺に訴えてくるが今更曹丕の言葉で揺るぐものはない。

「わかってます、曹丕様、どのようなお考えがあろうとも今の振る舞いはよろしくないと思います。

曹操様から厳しく叱られる事と思いますが今一度深くお考えなさる事をおすすめします。」

「なんだと!」

「止めろ曹丕!お前は何をしているかわかっているのか!!」

曹丕が反論する前に曹操が曹丕を叱る。


「父上・・・」

「この結婚は俺が薦めた話だ、文句があるなら俺にいうが良い!」

「それならば父上、姉上の気持ちを考えてください!

夏侯充と話している姿を見たことがありますか、あれこそ姉上が日々過ごすべき姿です!」

「曹丕、お前の目はそこまで何も見えておらぬのか・・・

曹丕、お前は後継者から外す、皆もよく聞け!今後曹丕は我が息子にあらず!

一親族として扱うようにせよ!」

「父上!何故そのような事を言うのですか!」


「お前自身の意見を俺だけに伝えたのなら内々に収めても良かった、だが今の状況がわからぬのか!

お前が反対意見を上げた漢は莫大な功績を立て、我が娘、曹清と充分釣り合う、いやそれ以上の漢だ。

俺としては最高の礼を持って臣下として迎え入れる相手にお前はどれ程の非礼をしている!

俺の天下は俺一人で出来るものではない、優れた臣下がいるからこそ成し遂げる事が出来るのである、それすらわからぬような者は息子にあらず!」

「父上!」

「これまで甘やかしていたのが悪いのだな、よいか今後屋敷に引きこもる事は許さぬ!一兵士として軍で鍛えられるがよい!」

「父上、お考え直しを!!」

「曹純、こいつを黙らせろ。そして、今日は出歩けぬように閉じ込めておけ!」

「はっ、曹丕様、こちらに・・・」

「離せ曹純!話はまだ終わっていない・・・離せ!」

曹丕が離せと言っても曹純は聞くことなく曹丕を連れ出していく。


「陳宮、すまない。

曹丕が礼を失した真似をした。」

「曹操、頭を上げろよ。

曹丕様は曹清様を気にかけていただけだろ、あまり厳しい罰はしなくても・・・」

「いや、折角の結婚式に傷をつけるような真似をしたのだ、あいつのしたことは重い。

お前が首を斬れと言うならそれも仕方ないと思うが?」

「斬らなくていい、厳しい罰を与えると曹清様も気にするだろ?」

「このことは俺に任せてくれ、二度とおかしな真似が出来ぬようにしておこう。」

「程々にな。」

俺は曹操を宥めるものの、曹操の意志は堅く、この日より曹丕は曹操の息子として扱われなくなるのであった・・・

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