第206話 袁紹の影響

袁紹が亡くなった事はすぐさま中華全土に知れ渡っていく、それほど袁紹という漢は天下に鳴り響く漢だったのだ。

「袁紹が亡くなったか・・・」

話を聞いた曹操は少し寂しそうな表情を見せ、天に向かい礼を取る。

現在敵対しているとはいえ、昔馴染みである、乱世で無ければ友として生涯を終えたであろう漢に礼をもって応えたのだ。


「曹操様、袁紹が亡くなった今こそ袁紹を滅ぼす機会ではありませぬか?」

近くに控えていた曹休が曹操に声をかける。

「いや、停戦の約定もあるから戦はせぬ、それにだ暫し様子見をしたほうが袁家は荒れるであろう。

郭嘉と荀彧、あと陳宮を呼べ。」

「ち、陳宮もですか?」

「そうだ、今後の戦略について話すのだ当然だろ。」

「わかりました、すぐに手配致します。」

曹休は命令通り渋々ながら陳宮にも使者を出す。


「曹操、袁紹が亡くなったのか?」

「そうだ、これで天下は荒れるな。」

「ふむ・・・袁紹のあとは誰が継ぐ?」

「それだ、袁紹の後継ぎは決まっていなかった、今後争いになるな。」

「有利なのは?」

「どれも同じぐらい・・・いや、お前にやられていない袁煕が一番強いか?

だが派閥が少し弱いか。」

曹操は袁紹の後継者を考えるが有力な袁譚、袁尚は手勢を陳宮にやられて立て直しの最中のはずだ、三者三様誰が後を継いでもおかしく無かった。


「曹操様、ここは離間の計を仕掛けましょう、幸い弟の荀諶が袁家に仕えております、あいつも身の振り方を考える頃でしょう内部から揺さぶりたいと思います。」

「よい策だ、荀彧手筈は任せたぞ。」

「はっ!」

「郭嘉は停戦後どうやって滅ぼすかを検討してくれ、陳宮は・・・任せた、お前なら何とでもするだろう。」

「まあ停戦後の話だな、軍備を整えておくさ。」

「うむ、袁紹には悪いが我らに天は味方したぞ、これで袁家を倒すことが出来る!」

一進一退の袁家との戦に勝ち筋が見えてきていた。


その頃、袁家の中では派閥争いが激化していた、それぞれ主君に相応しいと思う者に付き他派閥と言い合う姿が城内で至る所で見られる。

そんな中、高幹は呂希と新婚生活を送っていた。


「ねえ、高幹、あなたは家督争いに加わらないの?」

「俺か?俺は駄目だな、袁紹様の甥なだけで血筋が違う。」

「でも、甥じゃない、貴方が治める并州の兵力もあるし、貴方は才器に溢れている、言い争うだけの子供達よりよっぽど袁家を纏めるのに相応しいわ。」

「たしかにあの3人に負けるような器ではないが。」

「私は貴方なら天下を取れると思って妻になったのよ、私に貴方のチカラを見せてくれないかしら。」

「ああ、任しておけ・・・

俺のチカラを天下に轟かせてやる。」

そう宣言する高幹の眼は濁っていた。

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