第200話 袁紹からの・・・
「甄氏よ袁煕との婚約は破棄とし、我が娘として陳宮に嫁いでくれるか?」
甄氏は袁紹に呼び出されそう言われる。
口でこそ頼み事の形ではあるがこれは袁家の意志であり、甄氏に拒む事など許される訳は無かった。
「はい、袁紹様のお望みのままに致します。」
甄氏は2年程前に袁煕と婚約を結んだのだが、婚約した矢先袁煕は幽州の太守として赴任、甄氏自身は袁紹の妻、劉夫人のもとで行儀見習いの名目で侍女としての仕事をさせられていた。
戻って来たら結婚との話だったのだが、それは既に反故にされ、現在袁煕には北方の異民族、烏桓族との関係強化の為に縁組が結ばれようとしていた。
つまり、甄氏は袁家に捨てられたのである。
「ああ、袁煕様が跡目の可能性も出てきたところなのにな。」
甄氏は陳宮のもとに向かう道中、馬車の中で侍女に愚痴る。
「甄氏様、めったな事を言うものではありません、後継ぎの方はまだ決まっておりませんから。」
侍女の美鈴は甄氏の口を慌てて塞ぐ。
甄氏にとって幼き時から一緒に育ち、ずっと仕えてくれている美鈴が唯一心を許せる相手だった。
「大丈夫よ、私はもう袁家に戻る事なんて無いんだから。」
「それでもです、誰かに聞かれたらどうするんですか!」
「あら、それを言うなら貴女も官途の戦いが負けるなんて言うから処分されそうだったじゃない、あの時、田豊様が取りなしてくれたから良かったものの、本来なら打首よ。」
甄氏はクビに手を当てて切られるような真似をする。
「だ、だって、あの時は何とか戦を止めないとと思って・・・」
「まあ、結局あなたの予想通り、負け戦だったのよね。」
「はい、ですが、戦を無理に止めなかった田豊様がお亡くなりになるなんて・・・」
「それも言ってたわね、命懸けで止めても袁紹様は聞き入れてくれないから、田豊様が後方支援をして勝たせるようにしたほうがいいだっけ?」
「はい、それと食料庫が襲われてもすぐに運び込めれば負ける事はないと思ったんですけど・・・」
「美鈴は賢いわね、私なんてサッパリよ。」
「甄氏様はこんな私の話を信じてくれます、それだけでも凄い事ですよ。」
「だって、あなたの話、面白いもん。
あっ、でも外れている事も多いわね、私の未来の旦那様が曹丕だったっけ?」
「はい、たしかにそうなるはずだったんですけど・・・」
「はずれ〜〜〜私は陳宮というオジサンに嫁ぎます。」
「・・・陳宮、なぜまだ生きているのでしょう?」
「美鈴、それこそ怖い言葉よ、今から行くんだから絶対そんな事を言っちゃダメ。」
「あっ、すいません、つい思った事を言ってしまって。」
「私だからいいけど、これから陳宮様のもとで暮らすんだからね、陳宮様の悪い事は言っちゃダメ、まあ袁家の悪口ならいいと思うけどね・・・」
甄氏は美鈴と話しながら、陳宮の領地へと進んで行くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます