第199話 紹介

俺は曹操から文官を紹介してもらいに登城していた。

「陳宮殿、お久しぶりですな。」

見るからに上機嫌な程昱と会う。

「これは程昱殿、娘殿の縁談、まずはおめでとうございます。」

「おお、陳宮殿もお知りにでしたか、いやぁ〜やっと娘の嫁ぎ先が見つかりホッとしてます。」

「誠にお目出度い話です。」

「婿殿は陳宮殿と因縁があるやも知れませぬが、どうか私の顔を立ててお見逃しくだされぬか?」

程昱は深々と頭を下げる。

夏侯充と曹清の噂話は程昱も認識している、だが曹清と陳宮が結婚し、これから夏侯充が自身の娘と結婚するのだ、今後の曹家に火種を残さぬ為にも程昱は当人に代わりに許しを求めるのであった。


「程昱殿に頭を下げられれば私としても事を荒立てる気にはなりませんな。

お二人の門出を祝わせてもらいましょう。」

「おお、陳宮殿。

寛大な心遣い感謝致します。

私からも先日の噂の鎮静化に尽力させてもらいます。」

程昱は手を取り感謝を伝えてくる。


「それは曹清様の為にもお願いしたい。」

俺は程昱に噂の鎮静化を頼み、その場を後にした。


「陳宮、遅かったな?」

「曹操、時間には間に合ったはずだが?」

「いや、お前なら少し早く来るだろ?」

「そこで程昱殿に会ったからなら、少し話していたんだ。」

「ああ、なるほど縁談の話をしたんだな。」

「ご明察だ、程昱殿は律儀な男だからな、俺に謝罪をしてきたよ。」

「陳宮、お前には含む物もあると思うが・・・」

「大丈夫だ、誤解だという事は理解している、それに俺もお前の家中に火種を作りたい訳じゃないからなら。」

「すまんな・・・

まあ、この話はここまでにしようか、お前が求めていた文官を紹介しよう。」

「おお、来てくれる人がいたか!」

「人格者を選んだつもりだ、司馬朗入ってこい。」

一人の男が呼ばれて入ってくる。


「陳宮殿、お初にお目にかかります、司馬朗と申します。」

「司馬朗殿、よく私の下に来てくれる決断をしてくれました。」

「私が出来ることは多くありませぬが尽力致しましょう。」

「こちらからもよろしく頼みます、私が管理する領地では今文官が足りず、民に行き届いた内政が出来ておりません、司馬朗殿には民の為にお力をお貸し願いたく思います。」

「まずは民の為にですか。」

「民無くして国はありません、衣食住足りて、人礼節を知るとも言います、まずは民を慈しむ事が統治の基本と心得ます。」

「素晴らしいお考えにございます。

この司馬朗感服致しました。」

司馬朗は臣下の礼を取る。


「司馬朗殿、私は司馬朗殿には臣下としてではなく、友としてチカラをお貸し願いたい。

私が道を誤る時はどうか叱ってもらいたい。」

「私を友としてですか、誠に光栄にございます。」

俺の傘下に内政官が加わった瞬間だった。


「司馬朗の下に何人かつけて送るからな、少しは楽になるだろう。」

「曹操にも感謝するよ。」

「よく言う、それより曹清との結婚式をあげないか?」

「曹清様との結婚式か?」

「うむ、懸念だった夏侯充の件も片付く、家臣達にもハッキリと知らしめる為にも許昌で式をあげてみないか?」

「曹清様のお気持ち次第だな。」

俺は即答を避け、一時持ち帰る事にしたのであった。

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