第195話 噂話
曹操と夏侯惇の話を聞いていた近習達は夏侯充の婚姻話で盛り上がっていた。
「聞いたか、夏侯淵様の姪の夏侯敬様が夏侯充様に嫁ぐそうだぞ。」
「ああ、知っている、曹清様の代わりということだが、いいねぇ名門の人は次から次に可愛い相手が見つかって。」
「そう言うなよ、代わりに曹清様を諦めろってことだろ。」
「まあ、陳宮様はこの前の戦で大手柄を立ててるからな、あの方から奪い取るなんて無理な話だろ。」
「違いない。それに引き替え夏侯充様は大失態だからな。」
一般兵士達の間では戦に勝った陳宮の評価は高い、敗戦の夏侯充を庇おうとする者は少なかった。
そして、噂は夏侯充のもとにも届いていた。
「俺の妻に夏侯敬を迎えるというのか。」
夏侯充にとって曹清こそが恋しい相手である、夏侯敬を当てられると聞いて少し憤るが・・・
「落ち着け、たしかに曹清様をお助けしたかったが、先日の敗戦では・・・」
夏侯尚は敗戦後気落ちしている夏侯充の様子を見に来ていた時に噂を聞いてしまった為に宥める側に回るしか無かった。
「しかし、それでは曹清さまがあまりに不幸ではないか。」
「これも曹操様の命令だろ受け入れるしかない。」
夏侯尚が言うことにも一理ある、これも全て先の戦で負けた不甲斐無さだ。
夏侯充は唇を噛む。
「夏侯充、これを機会に曹清様は諦めろ。
たしかに曹清様のお気持ちはあるかも知れんがあまりに陳宮の功績が大きすぎる、曹操様が曹清様を犠牲にしてでも陳宮を引き止めようとしている事はお前も理解出来るだろ。」
夏侯尚に言われるまでもない、陳宮の功績は袁紹と戦い、自軍のみで平原を奪い取った・・・
捕虜となった自身と比べるなど恥ずかしい話であった。
「それに夏侯敬は可愛い子じゃないか、夏侯淵様の姪にあたるが実の子供のように可愛がられている子だ、縁をもつにもいいじゃないか。」
「それはわかる、わかるのだが・・・」
夏侯充は悩みつつも夏侯敬を思い出す、彼女は幼い時、父である夏侯勝を失い、失意にある中でも引き取られた夏侯淵のもとで礼儀作法から武芸まで学んでいたが、何一つ愚痴をこぼすことなく健気にこなしていた。
それに成長した姿も誰しも目を奪われるような美少女になっている。
これまで様々な男が誘っても身持も堅く、遊びにも来ない。
あまりに完璧すぎて手を出そうとする男はいなくなっていたのだが・・・
その相手に俺が選ばれたのか。
夏侯充は思わず鼻の下がのびていた・・・
「夏侯充、正式に話が来たら受けるんだな、悪い話ではないと思うぞ。」
「・・・ああ、考えておく。」
夏侯充は夏侯尚にそう答えるが、その頭の中には夏侯敬を娶ったあとの事を考えていたのであった・・・
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