第194話 夏侯家

「夏侯淵、俺に言うことがあるだろ!」

俺は夏侯淵の屋敷を訪ねる。

「陳宮に言う事か・・・

昨日はお楽しみだったな。」

夏侯淵は悪びれる事なく言う。


「おい!姪にあんな真似をさせといてそれだけか!」

「夏侯敬の望みだ、それに夏侯家とお前の繋がりを維持する為にも必要だからな。」

「しかしだな、若い娘に身体を張らせるような真似をするとは・・・」

「本人がいいと言っているし、そもそも必要な事だ。」

夏侯淵にブレは無い、夏侯敬を楔に夏侯惇の息子達の不始末で傷ついた陳宮との関係を繋ぎ止める、これは必要な事であった。

「そんな事をしなくても大丈夫だと言うのに。」

「こちらからもお前の情報を得るツテが欲しいからな、お前の女に一族を送ることは何も変な事では無い。」

「あー、わかった、くそっ、策に嵌ったのは俺だったか。」

俺は夏侯淵の策に嵌まった事を少し悔しく思っていた。

「何を言う、ハメたのはお前だろ?」

「夏侯淵!!」

「これで夏侯勝の願いだった、お前の童貞狩りも無事に終わった。

夏侯勝よ、安らかに眠れ。」

「そもそも童貞じゃない!」

「些細な事だ。」

俺の苦情も夏侯淵は受け流していた。


「夏侯惇、どうすればいいと思う?」

俺が夏侯淵と話している時、曹操は夏侯惇を呼び出し相談していた。

「曹操、俺の息子がすまない。」

「いや、お前を責める訳では無いのだ、だが若者達の認識を変えねば禍根となるであろう。」

「いっそ夏侯充を斬るか。」

「夏侯惇、そこまでする必要はない、お前の大事な跡取りではないか。」

「だがな、このままだと天下取りの邪魔になるだろう。」

夏侯惇は真面目な漢だ、俺の天下取りの邪魔をするぐらいなら息子とて容赦しないだろう。

夏侯充は既にギリギリの所に来ている。


「・・・そうだ夏侯惇、夏侯充を結婚させてしまおう。」

「結婚?」

「そうだ、正妻を迎えさせれば、俺の娘を妻になどという事は言えまい。」

「たしかに曹清を側室になどという話にはなるまいな。」

「誰か手頃な娘はいなかったか?」

曹操は家臣の子供達を考える、歳が近くそれなりの家柄で・・・


「夏侯淵のところに娘がいなかったか?たしか大層美しく育っているとか。」

「夏侯淵のところに?ああ、夏侯勝の娘がいたな、たしかに年頃だったはずだ。」

「よし、夏侯淵に連絡して話を進めよう。」

曹操は名案のように思う、夏侯惇と夏侯淵の家が次世代でも近いことは悪い話ではない、それに噂になる程の美少女、夏侯充も喜ぶであろう。


懸念事項の一つが片付いたようなスッキリとした気持ちになるのであった・・・

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