第191話 侍女

「夏侯淵、その娘は?」

「俺の姪で夏侯敬という、曹清の侍女にしようと思って、連れてきた。」

「侍女?」

「そうだ、お前に反抗心を持つのは多いからな、誰の息もかかっていない侍女がいたほうがいいだろ?」

「曹清には子供の時からついている翠嵐という侍女がいるのだが?」

「それは知っているが、翠嵐は曹清に意見出来ないだろ。」

翠嵐は忠誠心は厚いが曹清に従う事を重視しているところがある、夏侯淵の指摘の通り意見をすることは無いだろう。


「それにな、夏侯敬にはそれなりに武芸を仕込んでいる、そこらの兵士ぐらいには遅れをとらん。

護衛としても最適だろ?」

「たしかに護衛は必要か・・・

それにお前が言うぐらいだからな、それなりに強いのだろう。」

「少なくともお前よりは強い。」

「・・・え、えーと、俺より?」

「当たり前だ、お前より弱くて護衛が勤まらないだろ?

それと処女だ。」

「おい、最後の情報いらないだろ!」

「お前がお楽しみしても俺は文句を言わないからな。」

「おいおい、親御さんに悪いだろ!」

「この子の親は亡くなっているからな、俺が面倒を見てたんだ。」

「・・・すまん、軽口が過ぎたな。

夏侯敬、申し訳ない。」

俺は夏侯敬に頭を下げる。


「陳宮さま、頭をお上げください、両親が亡くなった事を知らないのは伯父様が言わないせいで陳宮さまが頭を下げる必要なんてありません。

むしろ、たちの悪い会話を進めた伯父様が悪いんです。」

夏侯敬はワタワタしながら俺に頭を上げるように言ってくる。


「どうだ夏侯敬、面白いやつだろ?」

「伯父様、失礼です。陳宮さまどうかお気を悪くなさらず。」

「うん?何が面白いのだ?」

「普通、小娘に頭など下げんだろ?

仮にもお前は一軍の将、夏侯敬を手籠めにしたって誰も文句は言えん。」

「おいおい、こんな可憐な乙女を手籠めになんて出来るかよ。

それに失礼があれば相手が誰であれ頭を下げる必要があるだろう。」

俺の言葉に夏侯敬は目を丸くしている。


「聞いたか、こんなやつなんだ。

そのくせ納得出来なければ、曹操にも逆らうからな。」

夏侯淵は楽しそうに笑っている。

「からかうなよ、だが曹操といえど間違いがあるならちゃんと言わないとな、それにそれが民の命に関わる事なら尚更だ。」

「それを実行に移すのがお前の怖いところだよ。

夏侯敬、お前が仕える主人として充分だろ?」

「はい、誠心誠意お仕えさせていただきます。」

「仕えるのは曹清様にだろ?」

「はぁ、お前の息がかかった者が曹清の側に仕える事が大事なんだよ、誤解を招く事も無くなるだろ?」


夏侯淵が言う通り、俺の部下が曹清の側にいれば噂を否定出来たのかも知れない。

「夏侯淵、流石だな。」

「俺は曹家を護る為にやっているだけだ、お前が裏切るなら夏侯敬の刃はお前に向くかもしれんぞ。」

「その時は考えるよ。

今のところ裏切るつもりは無いしな。」

夏侯淵は3人を置いて帰って行くのであった・・・


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