第185話 説得

停戦をむかえ、俺達は軍を引き上げる。引き上げ際に曹操が話しかけてきた。


「陳宮、許昌で論功行賞を行う、出席を頼む。」

「別にいい、と言いたいところだが、出席しないと困るのだろう?」

「困るな、どう考えてもお前が第一功だからな、お前の功績を讃えないと家臣に示しがつかない。」

「わかった近いうちに許昌に向かうよ。」

俺は約束したあと一度平原に戻って行くのであった。


「平原は高順に任せるよ、下邳は劉辟に、俺を含めた本隊は臨淄を拠点にする。」

「陳宮様、俺が下邳の太守で良いのですか?

俺はついこの前まで山賊だったんだが・・・」

「劉辟は義侠心があるからな、住民を苦しめる真似はしないだろう。」

「まあ、するつもりは無いが・・・」

「なら大丈夫だ、何せ人がいないからな頼むよ。」

「わかった、期待にそえよう。」


「みんなに伝えておく、袁紹との停戦は一年となった、その間にチカラをためねば次に負けるのは俺達になる、各々油断無きよう準備してくれ。」

「「はっ!」」


「次に、近々論功行賞で許昌に向かうことになる、その間張遼を中心に・・・」

「おい、お前は馬鹿か?お前が許昌に行ってどうする?」

俺が全てを話す前に張遼が言葉を遮る。

「いやいや、一応曹操の部下だからな、論功行賞の場には出ないといけないだろ?」

「お前の言い分もわからない訳では無い、だがあまりに危険過ぎる。」

「手柄を立てた後だから大丈夫だろ?

今俺を害したら今後曹操に従う者もいなくなるからな。」

「たしかに一理はあるが・・・」

張遼からすると半独立勢力化している陳宮軍を崩壊させようと、陳宮個人を暗殺しようと考える者がいてもおかしくない。


「それにだ、一つ切実な問題がある、それを解決するために許昌に向かうんだ。」

「切実な問題?」

「文官がいない。」

「・・・はい?」

「徐州、青州だけでも人が足りていないのに平原を取ったからな、どう考えてもキャパオーバーだ。」

現在陳宮軍で文官作業を頑張っているのは俺と陸遜である、軍事に特化した俺達だが内政を行うにはあまりに足りなすぎる、許昌に行って曹操から人員を補充してもらおうと考えていた。


「文官か・・・たしかに少ないな。」

張遼は居並ぶ仲間を見るが得意そうな奴が見当たらない。

「これから先を考えれば早いうちに何とかしなければならない問題だ、危険性が低くなっている今こそ人員補充のチャンスだと考えてほしい。」

「・・・わかった、ただし、護衛として張郃と趙雲は連れて行け。」

「了解した、二人とも頼めるかい?」

「おまかせを。」

「必ずやお守り致します。」

こうして何とか説得を済ませた俺は許昌に向かう事ができたのであった。

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