第177話 孫香と黄蓋

曹清か到着してから数日後、孫香と黄蓋がやってくる。

黄蓋が支配下が安定するまで孫香が向かうことを許さなかった為に少し遅れたとの事だった。

「陳宮様、おめでとうございます。」

「孫香殿、黄蓋殿、おかげさまで勝つ事が出来ました。 御助力感謝致します。」

俺は孫香と黄蓋に感謝を伝える。

「ワシは姫様に従っただけだ、全ては姫様のおかげと思われよ。」

「もちろんでございます。孫香殿本当に感謝致す。」

「えあ、当然の事ですわ。ですが、お約束の寝所にまいる件は・・・」

「それならば構いませんよ、大喬小喬にも話しておりますのでいつでもお聴かせ出来ると思います。」

「あの二人も到着しているのですね?」

「ええ、頼りない私の為に早々来てくれました。」

俺は大喬小喬のお陰で戦後、安眠を手に入れる事が出来ていた、二人にも感謝しかない。


「ならば、わたくしも今宵から参加させていただきます。」

「いいですよ、そうだ、今宵は黄蓋殿もおられるのですから宴を行いましょう。」

「・・・それでは意味が。

いえ、たしかに黄蓋にも聴かせてあげるべきですわ。」

孫香は一度拒否しようと思ったが、陳宮の好意である、事を急ぐより、信頼を得ることを重視し、受け入れる事にする。


こうして黄蓋を招いた祝勝会が開催されるのであった。


「黄蓋殿、まずは一献。」

俺は黄蓋と席を並べ礼を尽くす。

「陳宮殿、貴殿は既に一国の主といえる存在、ワシにそこまで気をつかう必要はござらん。」

「何を言いますか、この度の戦に勝てたのは黄蓋殿の助力があったからこそ、礼を尽くすのは当然の事にございます。」

「恐いものよ、その下手から出る礼をもって心を攻めるか、ワシも主が無い身ならひとたまりもないな。」

黄蓋は大きく笑う、陳宮の立場は既に群雄と呼べる程の勢力であり、支配地域を考えれば孫権より広いのである。

その漢が一武将の自分を上に置きもてなすのである。

その高揚感に心動かされる者は少なくないであろう。


「褒められているのですか?

何とも言えませぬな。

おっと、大喬小喬の準備が出来たようですな、さあ一曲堪能あれ。」

大喬小喬の演奏と舞が始まる、その光景は天上の舞を思わせるものがあり、武骨者の黄蓋にしても感動する者物があった。


「見事な唄に舞だ、これを見れただけでも援軍に来た甲斐があったよいうものだ!」

黄蓋は感動のあまり涙を流しながら、喜びを伝えてくる。

「二人も喜ぶ事でしょう、大喬小喬ありがとう。」

「陳宮様、礼には及びませぬ。私達は家族も同然にございましょう。」

大喬はニコヤカに笑う。


俺は日頃仲間を家族として、付き合っているつもりだった。

大喬の言葉に二人も仲間なのだと改めて自覚するのであった。


「そうだったね、家族の二人には礼は不要かも知れないね。

それでも、素晴らしい唄に舞だった。

俺も感動したよ!」

「お褒めいただありがとうございます。」

小喬は俺の言葉に満足したのか満面の笑みを浮かべていたのだった。


その反面、孫香がしてやられたという表情を見せていたのだが、俺はその姿を見てはいなかった。

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