第176話 曹操に知らせる
袁尚、袁譚軍を破ったあと、平原の城は抵抗少なく俺の支配下に入って来ていた。
「陳宮様、お怪我はございませんか!」
成廉、魏越が周辺を慰撫している中、臨淄に滞在していた曹清、大喬、小喬達が平原の城にやってくる。
「曹清様、おかげさまで怪我をしておりませんよ。」
「それは良かった・・・」
曹清は胸を撫で下ろす。
陳宮が出陣してから心配で食事も喉を通らないほどだった。
「曹清様、少しお痩せになられましたか?」
「えっ、はい、少々ですが・・・」
「あまり痩せ過ぎるのは身体に悪い、少し早いですが食事に致しましょう。」
俺は久しぶりに会った曹清と食事をする。
心なしか曹清の表情に明るさが戻ったような気がしていた。
その頃、趙雲が曹操への使者として黎陽に到着していた。
「陳宮の使者か・・・なんと、平原を落としたか!」
「はっ、我が主、陳宮様は現在平原を落とし、周囲を支配下におさめている所にございます。」
「見事なものだ、流石は陳宮だ。
皆もそう思うであろう。」
曹操は陳宮を褒め称える事で陳宮に反抗心を持つ家臣を抑えようとする。
「つきましては袁譚、袁尚を捕虜に致しました、その使い道を任して欲しいとの事にございます。
詳しくはこちらに。」
趙雲は陳宮からの書状を曹操に渡す。
「ふむ、見ようではないか。」
曹操が書状を読んでいる間に武官の朱鑠が趙雲に聞こえるような嫌味を言う。
「袁紹の子息など曹丕様と同じようにすべきであろう、それを陳宮如きが要求するなど身の程を知知らんのではないか。」
「・・・」
「ふん、陪臣風情が俺を無視するつもりか。
まったく主が立場をわきまえぬならその部下も礼儀知らずか。」
「どなたか知らぬがそれ以上我が主を侮辱するなら我が剣にて静かにしてもらいますが、如何になさいますか?」
趙雲は静かに殺気を朱鑠に向けて放つ。
「ぶ、ぶ、ぶれいな・・・
曹操様がいる前で殺気を放つとは・・・」
「臣が主を侮辱され黙っているわけにはいきませぬ、謝罪をせぬなら一度外に出ましょう。」
「静まれ!朱鑠、お前が悪い、陳宮は俺の娘婿だ、俺に意見をして何が悪い!」
「申し訳ありません。」
「俺に謝る前に趙雲に謝れ!」
「くっ、趙雲殿、非礼をお詫び致す。」
「承った、お歴々の方々にも申す!
我が主、陳宮様を蔑む気ならこの趙雲が相手になりましょう!!」
趙雲はその武威を周囲にまき散らし全体を威圧する。
主だった武将が統治に出向いている中、曹操の周りに残っている二級品の武将達は趙雲の武威に圧倒され、声も出なくなる。
「趙雲、そこまでにしてくれ、こいつにはしかと罰を下す。」
「失礼致した、して、袁尚、袁譚の扱いは陳宮様のお考えでよろしいでしょうか?」
「丁度良い話だ、恥ずかしい話、若者達が袁紹に捕まっているのでな、捕虜交換を申し出ようと思う。」
「わかりました、我が主にお伝え致します。」
趙雲は曹操に礼をしたあと足早に戻っていくのであった。
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