第175話 捕虜の扱い
「夏侯充達が捕虜になっただと!」
曹操の元には夏侯充が袁紹軍の罠に嵌まり、降伏したとの情報が入って来ていた。
「まだ一軍を任せるには無理だったか・・・」
「曹操様、捕虜ならば交渉次第では戻って来ることもありえましょう、今は支配地域を拡大し、交渉材料にするべきかと。」
郭嘉は曹操に進言する、ただの若者なら見捨てても良いのだが、捕虜になった者達は曹操の一族に夏侯惇の息子と一族である、安易に見捨てる政策を出す訳にもいかない。
「うむ、袁紹が鄴に籠もるなら周囲を支配し、その領有権で交渉を行うか。」
曹操は軍を動かし、袁紹が手放した領地を支配下におさめていく。
一方、袁紹軍では・・・
「なに?捕虜になった将が曹操の妻を寝取った相手だというのか?」
「はい、名前を確認したところ、先日許昌で噂になった男にございました、また他の将も陳宮をよく思っていない者達の様子でして・・・」
沮授は渋い表情を浮かべる、曹操に似合わぬ安易な追撃は曹操の策で曹操陣営から反陳宮の勢力を一掃する策だったのではないか疑うぐらいには邪推していた。
「なんと!それはこまった話ではあるな、陳宮をこちらに寝返らすにも反陳宮の勢力には曹操の元にいてもらわねば困る。」
「そこで私に策がございます。」
「うむ、聞こうか。」
「まずこの捕虜の中で曹操と血が遠い夏侯徳だけをもてなすのです。」
「もてなすのか?」
「そして夏侯徳を陳宮一派のように扱い、陳宮が我らと繋がっているからもてなすと誤解させるのであります。」
「なるほど、そしてその誤解をもたせたまま・・・」
「はい、御明察のとおりにございます。
もてなされなかった者ともてなされた者、それなりに思うところが出来る事でしょう。
その後は何か理由をつけて曹操に返してやればよろしいかと。」
「うむ、見事な策だ、沮授よ、任せたぞ。」
「はっ!お任せあれ。」
沮授は袁紹の許可を取り、すぐさま動き出す。
夏侯徳を牢屋から出し、城内に一室を与える。
「夏侯徳殿、貴殿が陳宮殿のお知り合いと知らず牢に入れたことをまずは謝罪致します。」
「陳宮の知り合い?」
「貴殿の名は陳宮殿の書状にもございましたからな、何でも見込みのある若者だとか、陳宮殿がそれほど褒める者は少ないですからな、奇妙な縁とはいえ、会う事が出来て私も光栄ですな。」
「見込みのある者か、陳宮がそう言っていたのか。」
夏侯徳はどことなく嬉しそうにする、口では嫌っているものの、陳宮の凄さを多少なりは理解している、その者に認められているというのは誇らしく思うのだ。
「はい、まだ粗い所もあるが将来楽しみな若者だと言っておりました。」
「なるほど、いや、これは少々照れくさい話ですな。」
夏侯徳は嬉しそうに話し出す。
「さあ堅苦しい話はこれまでにして、こちらに膳を用意しております、貴殿の武勇伝をお聞かせ願えますかな。」
「ぶ、武勇伝など・・・いや、断るのもなんですな、お付き合い致しましょう。」
夏侯徳は沮授の歓待を受け上機嫌で捕虜生活をおくる事になるのだった。
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