第183話 捕虜交換

帰って来た趙雲から話を聞いた俺は軍を率いて曹操に合流していた。

「陳宮、久しぶりだな。」

「曹操久しぶりだな。

今回はいきなり戦を始めて悪かったな。」

「お前のやることだからな、特に俺のチカラがいらなかったんだろ?」

「まあ、奇襲を仕掛けるなら誰にも知られない方がいいからな。」

「その点は気にするな、その為に曹清が側にいるのだ、お前は一族として存分にチカラを振るってくれ。」


「わかったよ、出来る限りの事はしているつもりだが・・・

それより捕虜の袁尚、袁譚は連れてきているが、捕まっている若者達って誰だ?」

「捕まっているのは曹真、曹休、夏侯徳と・・・夏侯充だ。」

曹操は夏侯充の事は隠すか一瞬考えたが、隠した方がいらない誤解を招きそうなので正直に話す。

「夏侯充か、たしか曹清様の噂のお相手だったよな?」

「違う!たしかに曹清と噂にはなってしまったが相手という訳ではない!」

曹操は慌てるように否定する。

「その事はもういいさ、夏侯充は夏侯惇の長男だろ?助けない訳にはいかないよな。」

「うむ、お前には申し訳ないが・・・」

「構わないさ、元々袁紹に捕虜を返す必要があるからな。」

俺は軽く返すが、曹操の表情に暗さを感じていた。


鄴の前に両軍を出しその中間で捕虜交換を行うのだが、袁紹からの提案もあり、曹操と俺、袁紹の3人が集まる事になる。


「袁紹も大胆だな、軍が居並ぶ中出てくるとは・・・」

「袁紹はそういったところがあるからな、まあ互いの性格上、この場でやり合う事にはならないだろう。」

曹操は袁紹と付き合いも長い、互いの性格をわかっており、わざわざ会談を求めた場でやり合う事等無いことはわかっいた。


「待たせた。」

少し遅れて袁紹がやってくる。

「遅いぞ、袁紹。」

曹操が軽口を叩くところを見るに仲自体は良いのであろうことがわかる、個人の仲が良くとも戦になる、乱世を感じる瞬間でもあった。


「曹操、捕虜を連れてきたぞ。」

袁紹は夏侯充達を連れてきていた、だが夏侯充、曹真、曹休は拷問こそ受けていないものの、疲弊している感じが隠せない、ただ夏侯徳だけが元気そうな表情であった。


「袁紹殿、こちらも御子息をお連れしました。」

俺も袁尚と袁譚を引き合わせる、待遇に差をつけていたとはいえ、二人共に礼服を用意し恥ずかしくない姿にしていた。

「父上、申し訳ない。」

袁譚は深々頭を下げる。

「父上ありがとうございます。」

袁尚は感謝を告げる。


この二人の返答が性格を表しているのだと感じる。


「二人共、話は後で聞こう、先に軍に戻れ。」

袁尚と袁譚は袁紹の言う事に従い、用意された馬に乗り戻っていく。


「曹操様申し訳ありません。」

曹操のところでは夏侯充が代表して曹操に謝罪を入れていた。

「・・・敗けた事は致し方ない、だが此度の経験を忘れるな。」

「はっ、肝に命じます。」

「あと、陳宮が捕虜を取っていたからお前達は帰って来れたのだ、陳宮に感謝するのだぞ。」

「・・・陳宮。

陳宮殿にですか?」

「そうだ、さもなくばまだ敵城内で囚われていたやもしれん、感謝するのだ。」


夏侯充達は俺の所に来て感謝を述べる。

「この度は我々をお救いいただき感謝致します。」

「若いうちの失敗はいい経験になる、今回の事を無駄にしないように精進してくれたらそれでいいよ。」

「・・・ありがとうございます。」

若者達は悔しそうな表情を浮かべて感謝の言葉を述べていた。

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