第169話 袁尚
殿を蹴散らされていく袁尚軍は撤退から敗走へと変わっていた。
「くそっ!退却だ!」
馬に跨り、馬を駆ける。
「お、お待ちを!!」
だが軍師逢紀は馬に乗るのが得意では無い。
袁尚が逃げ延びようとする速度と比べるとかなり差があった。
「逢紀、お前は自身で退却しろ、私は一刻も早く父の元に知らせねばならんからな。」
「そんな、こんな所で見捨てられたら私はどうすれば・・・」
逢紀の言うとおり、現在袁尚の周りにいる兵士以外は既に指揮を失い敗走する兵士ばかりだ、逢紀が武勇に自身のある将軍であれば、武勇を示し退路を確保出来るかも知れないが、軍師である逢紀にそのような武勇は無い。
袁尚の側から離れると待っているのは敗走する兵士に巻き込まれ、追手に追撃される、もしくは敗残兵狩りに合いかねない。
「知らん!勝手にしろ!」
「袁尚様!」
袁尚は振り返ることなく馬を走らせる、取り残された逢紀は馬を止め呆然とするのであった。
「逃げろ!逃げるのだ!」
馬を走らせる袁尚にとって何故今馬を必死に走らせているのかわからない、自分は余裕を持って退却していた筈だったのだが、後方がアッサリ壊滅したことで全軍が敗走に変わってしまい、袁尚は僅かな供回りとともに全力で逃げる所であった。
「なぜだ!なぜこうなった!」
袁尚は悪態をつきながら馬を走らせるが周囲に答える者はいない。
「その身なり、それなりの将と見受ける!その首もらった!」
逃げる袁尚に後ろに回り込んでいた成廉が襲いかかる。
成廉は袁尚の僅かな供回りを一気に討ち取り、残すは袁尚のみとなったいた。
「何故こんな所に敵が・・・」
「うちの大将にとって勝つことは見えていたんだよ、だから最初から逃げ道に兵士がいるわけだ。」
「なっ、私達が負ける事がわかっていただと!」
「くく、現に負けてるしな。」
「くっ!ふざけるな!この私が負けるなど予測されてたまるものか!」
袁尚は剣を握り成廉に向かって斬りかかる。
「この程度の腕で将とは袁紹軍はどれほど弱い。」
成廉は袁尚の剣をアッサリと弾き飛ばす。
「なっ!」
「さて、しまいだな。」
「ま。まて!私は袁尚だ!袁紹の三男袁尚である、私に従えば報酬を払う!」
「へぇ、あんたが袁尚なのか?」
「そうだ、だから私に仕えるが良い、今より良い生活をさせてやろう。」
「なら斬るのは止めとくか、捕縛しろ。」
「な、何を言っている、億万長者になりたくないのか!」
「俺は仲間を裏切ってまでそんなもんになりたくねえな、まあ、俺ぐらいが裏切ったところで大将達にやられるだけだがな。」
成廉は捕縛されていく袁尚と笑いながら話していた。
「離せ!離さんか!」
「大人しくしてたら痛めつける必要も無いんだ、大人しくしろよ。」
成廉は騒がしい袁尚に殺意を向ける。
「えっ、あ・・・」
成廉が向ける殺意にお坊ちゃん育ちの袁尚は固まる。
「静かになって結構だ、全軍引き上げるぞ。」
成廉は土産を持って陳宮が待つ本陣に帰環するのであった。
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