第164話 説教?

曹仁に集められ、曹休、曹真、夏侯充を始め陳宮、曹清の結婚に反対する者が集められる。

「曹仁、全員集めたか?」

「ああ、都にいる奴らはいないが、この戦場に来ている者は全員いる。」


「お前達が集められた理由は聞いているか?」

夏侯淵の問いに全員が頷く。

若者からすれば、夏侯淵は面倒見のいい兄貴分であり、曹操軍の武を預かる存在だ。

その漢の緊急招集に皆が息を呑む。


「お前達が陳宮と曹清の婚姻に反対している事を聞いたが・・・

何故だ?理由をいえ、曹真!」

「えっ、そ、そりゃ曹清様はまだ若いのに、あんな年老いたオッサンに嫁ぐなんて考えられないし・・・」

いきなり当てられた曹真はシドロモドロに答える。

「それで手紙を止めたのか?」

「えっ?」

「俺が知らんと思っているのか、陳宮との結婚が決まってから色々調べさせてもらった。

曹真、近衛の仕事に手紙の妨害が含まれていたなど俺は知らんがどういう事だ?」

「そ、それは・・・」

「これは職務怠慢である!

正当な理由があるなら聞くがどうだ?」

夏侯淵の眼は厳しい、兄貴分とはいえ優しいだけの漢では無い、人一倍職務に厳しいのだ。

自分の感情だけで手紙を止めたなど、理由にならない事は曹真自身も理解している。

答えられず冷や汗を流している・・・


「夏侯淵様、曹真は曹清様の事を想って行ったに違いありません!

たしかに職務に怠慢だった事は問題ですが広いお心を持って見逃す、いえ、減刑出来ないでしょうか?」

「夏侯徳、如何なる時も職務に忠実で有るべきだ、ましてや近衛という職務にあたる以上、怠慢は他の部署より重い!

それでも庇うというなら君の考えも正す必要があるが?」

「・・・申し訳ありません、出過ぎた事を申しました。」


「夏侯淵殿、曹真はまだ若い、たしかにやり過ぎではあるが未来ある若者をやたら罰するのは良くない事だ。」

曹休は同じ近衛でもある曹真を庇う。

「曹休、君も陳宮と曹清の結婚に反対だとはな。」

「当たり前じゃないか、陳宮は一度裏切った男だ、そんなやつに曹清様を渡せるか!」

「ならば聞く、一度裏切ったからこそ、再び仕えさすのに曹清という相手が必要だとは考えないのか!」

「なっ!曹清様を駒扱いとは・・・」

「この乱世、綺麗事では無いのは知っているだろう。」


「夏侯淵様、ならば曹清様が不幸になられてもよろしいと、そう言いたいのですか?」

夏侯充が重く口を開く、噂を立てた自分が口を挟めば父夏侯惇が怒るとは思うが、嫁ぐ時の曹清の苦しそうな表情を思い出すと言わずにはいられなかった。


「不幸かどうかはその後の生き方で決まるだろう。」

「おい、それは無いんじゃ無いか。」

曹仁も思わず口を挟む。

「乱世で望み通りに生きれるのは強者だけということは理解出来るだろう?

曹清は強者か?お前達はどうだ?

少なくとも陳宮は強者として手柄を立てた、ならば強者として生きれるのは陳宮だと思うが?」


「夏侯淵様!ならば我らが強者なら曹清様をお救い出来ると言うのですか?」

「強者ならな・・・

よし、ならばお前達この戦で陳宮を越える手柄を立ててみよ、さすれば俺から曹操に話してやってもいい。」

夏侯淵の意見は陳宮、曹清の結婚反対派の断罪だったはず、その意見が変わったのだ、反対派の若者達は周囲を見回す。


「夏侯淵様、本当に陳宮を越える手柄を立てれば曹操様に婚姻の破棄をお願いしてくれるのてすか?」

「俺は嘘は言わん、お前達の誰でもいい、陳宮を越える手柄を立てて見せよ、そうすればその男は陳宮より価値があると認めてやろう。」

反対派にとって夏侯淵が後ろ盾になってくれる事は何よりありがたい、何人かに笑みが溢れる。


夏侯淵は話はこれまでとばかりに陣幕から出ていく。

「夏侯淵、この度の招集は若者に激を飛ばすつもりだったのだな。」

反対派とまでは言わないものの様子を見に来ていた曹洪は少し胸を撫で下ろす、若者達に行き過ぎた点はあるとはいえ、次世代の曹家を支えるべき者達だ、曹洪としては穏便に済ませられてよかったと思う。


「あいつらに陳宮を越える手柄を立てれるか見ものだな。」

夏侯淵の笑みが黒い事に若者達は気付いていなかった。

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