第160話 援軍の審配
審配が西平昌という城にたどり着いていた。
「さて、あと少しで黄河だ、なんと言って袁尚様と袁譚様を説得したものか・・・」
審配はどう話を持って言っても喧嘩を始める二人の姿が想像出来ていた。
自分と袁尚で黄河流域を守り、袁譚に南皮を奪い返しに行ってもらう、これがベストなのだろうが、袁紹が命じたのは自分と袁尚で南皮を取り返すということだ。
その言葉の端には袁尚に功績を立てさせて後継者に任じたい思いがあるのだろう。
そして、自分としても甥の失態を挽回せねばならない、黄河で睨み合いをする気は無かった。
「なんだ?兵士が駆けて来ている、黄河の方からか?」
敗走する袁尚軍が西平昌まで逃げて来ていた。
「お前達、何処の兵士であるか!」
「え、袁尚様の軍だ、戦はもう敗けだ、早く逃げないと奴らがくる!」
逃げる兵を捕まえ問いただす。
「大丈夫だ、我らは4万からなる軍である、少々の敵ごときに遅れを取ることは無い、お前達は逃げずに軍に復帰するように!」
審配は逃げてくる兵士を吸収しながら状況を確認するために偵察隊を派遣する。
「申し上げます、敵軍、黄河を渡河し終えております。」
「くっ、渡られてしまったか、敵軍の数は?」
「およそ2万と思われます。」
「2万に敗れたのか・・・」
審配は逃走してきた兵士から話を聞き、袁譚軍が南皮に向かった為に袁尚軍2万で防戦するしか無かったと聞いたが、まさか同数程度に破られているとは思わなかった。
「報告、袁尚様を発見しました、現在こちらに向かっております。」
「おお、ご無事だったか、誰か袁尚様のお部屋をご用意しろ。私は出迎える。」
審配は城の外まで袁尚を出迎えに向かう。
「審配将軍、救援ありがたい・・・」
袁尚の表情から疲れが見える。
「援軍が間に合わずに申し訳ない、さあ話はあとにして一度お休みください。」
「ありがたい・・・」
袁尚は審配の手を取り感謝を伝えていた。
湯浴みをし、少し落ち着いた袁尚は審配とあらためて会っていた。
「袁譚様が急に軍を動かした為に防戦が出来なかったのですね?」
「そうだ!私の事が嫌いだとしてもせめて伝えて行くのが礼儀であろう!」
袁尚の怒りは袁譚に向かっていた。
だが、審配としては袁譚の考えもわかる。
袁尚に伝えた所で南皮を救援に向かうと言うだけだろう、袁譚にしては拠点の南皮を失う訳にはいかない、南皮を救うのは袁譚で無いと駄目なのだ。
袁家の兄弟喧嘩は既に修正不可能な所まで来ていた。
「申し上げます!北方より逃走兵の姿があり・・・
袁譚軍が敗北したようにございます。」
「なっ!」
「おお!袁譚の奴が負けたか、これはいい!」
敗戦したことに衝撃を受ける審配の隣で袁譚の敗戦を喜ぶ袁尚がいた。
「袁尚様、これはまずい状況ですぞ、少なくとも人前でお喜びになられない方がよろしいかと。」
「うむ、私が軽率だった、して兄上の行方は?
討ち取られたか?」
「行方はわかっておりません。
兵の話によるといきなり火に囲まれたあと鬼に襲われたなど意味不明の言葉を発しておりますので少々調べるのに時間がかかりそうです。」
「致し方ない、兄上の死の確認を急げ。」
「袁尚様、急ぐ事は他にもございます、敵軍の数、状況をわかるものを探してくれ。」
「はっ!逃走兵をこちらに向かわせておりますので到着次第、確認を急ぎます。」
袁譚軍は8万いたのだ、黄河を渡河した軍が2万いることを考えると南皮にいるのは多くて3万、それなのに袁譚軍が負けた?
審配は何が起きているかわからず不安になる。
そして、その不安は逃走兵と直接話す兵士達にも広がっていくのであった・・・
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