第158話 曹彰、強敵に会う

「うおぉぉぉ!!」

曹彰は張遼軍に混じり槍を振るう、幼いながらもその膂力は既に大人顔負けであり、張遼に指南を受けた槍術も一廉の武将に遜色の無い物までに成長していた。


「曹彰、いい腕前だ。」

「師匠!」

「だか兵を率いる事も考えるべきだな、今のお前はただの武人にすぎん。」

「はい!それは今後の課題と致します、ですが今は一武人として経験を積みたいと思います。」

「良かろう、ならば先陣を駆けてみよ。」

「はい!」

張遼は曹彰を補佐しつつ、軍を進める。


「邪魔だぁ!!」

曹彰は目の前の敵を斬り伏せる事に集中する。

「子供が何故戦場に立っている!」

袁譚軍の高覧が曹彰の前に立つことになる。


「子供といえど侮るな!俺は曹操が子息、曹彰なり!俺の武勇を恐れぬなら一騎討ちを所望する!」

「子供を相手に一騎討ちか・・・

良かろう、大人として身の程を教えてやる、敗けた時は大人しく捕虜になれ。」

「やる前に勝った事を考えるな!」

曹彰が槍を振るう。

「ぬっ、一応鍛えてはいるようだな。」

高覧は槍を受け止める。

「俺の槍を受け止めるとは!」

「まだまだ、若い!この程度受け止めれん奴がいるか!」

高覧は曹彰の槍を大きく弾き飛ばす。

その為に体勢を崩すのだが、高覧はその隙をつくような真似はしなかった。


「何故追撃をしない!」

情けをかけられたと感じた曹彰は憤る。


「子供相手にそこまでは出来ん。

勝てぬと思うのなら退くか降伏するがよい。」

「くっ!俺を侮辱したことを後悔しろ!」

曹彰が槍を繰り出すも高覧は見事な槍さばきで受け流し続ける。


「はぁはぁ・・・」

曹彰は攻撃を続ける事で息が切れ始める。

「その歳としては見事なものだ、私の子にも見習わせたい。

だが、もうここまでだろう、大人しく下がれ。」

高覧は曹彰が降伏を選ぶような漢と感じない、だからこそ下がるように伝えるのだが・・・


「ふざけるな!俺はまだ負けていない!」

「これ以上やるなら、命のやり取りも覚悟すべきだぞ。」

高覧の殺気が曹彰を貫く、曹彰にとって自身より格上の相手から本気の殺気を感じるのは初めての事だった。

「こ、これは・・・」

高覧の殺気に身が縮こまる感じがしてくる、それと同時に恐怖が心を埋める。


「怖いか、ならばそのまま帰るがよい。」

「くくく、これだ、これだよ!俺が感じたいのはこんなヒリヒリした感じなんだ!」

曹彰は急に笑い出す。


「子供、気がふれたか?」

「違うね、俺は至って冷静だ、貴殿の名は何と言う?」

「私は高覧、袁紹軍で猛将と名を馳せる者である。」

「高覧殿、貴殿に感謝致す、この曹彰の最初の強敵として記憶に残しておこう。」

「まだ、やると言うのか?」

「当然だ!」

曹彰から武人の覚悟が伝わってくる。

これ以上の手加減は曹彰の覚悟に対する侮辱である。

高覧は仕切り直す為、一度距離をとる。


「分かった、曹彰殿。

貴殿も武人として挑んで来ると言うのなら私も全力でお相手いたそう。

袁紹軍、高覧!いざ尋常に!」

「勝負!!」


曹彰と高覧、互いに馬を走らせ、一刀を振りかぶる。

互いの槍が交差するのだが・・・


今まで弾かれていただけの曹彰の槍が弾かれない。

「うおぉぉぉ!!」

曹彰の限界を超えた一撃が逆に高覧の槍を押し込み始める。

「ぬっ!何処にこれ程のチカラが!!」

「ぐぬおぉぉぉ!!」

曹彰の槍は高覧を斬り裂く、

「お、おみごと・・・」

高覧は曹彰の成長を実感することになる、劇的に成長したその姿は武人として敬意を払うに値する。

高覧は曹彰に武人として敬意を持ちつつ命を落とすのだった。


「高覧殿、貴殿の事は生涯忘れない・・・」

曹彰はチカラを使い果たし馬上で倒れそうになる。

「よくやった、曹彰。あとはユックリ休め。

成廉、曹彰を陳宮の所に連れて行け。」

「あいよ、そんで張遼は何をする気だ?」

「弟子が漢を見せたのだ、師匠の俺が華を添えてやる。」

「程々にな。」

成廉は力尽きた曹彰を連れて下がる。


「さて、袁紹軍よ。

運が悪かったな、今日の俺は何処までも強いぞ、覚悟するのだな。」

張遼は袁譚軍に突撃をしていく、張遼が先頭に立ち青龍偃月刀を振るうその姿は、運良く生き延びる事が出来た袁譚軍は歩兵に至るまで忘れる事が出来なくなるほどの悪夢となる。


陸遜が放った火計が収まる頃に袁譚軍は残っていなかったのだった・・・

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