第156話 兄弟喧嘩

南皮陥落の報告は袁譚、袁尚のもとにも届いていた。

「こうしてはいられん、袁尚ここは任せる、私はすぐに南皮を助けに行く。」

「袁譚兄上、ここの大将はあなたなのです、救援には私が向かいましょう。」

袁尚は袁譚の本拠地である南皮を助ける事により、自身の影響力を増そうという心積もりがあった。


「袁尚、南皮は私の領地だ、私が責任を持って取り返す、お前は4万の兵でここを守れ。」

「はぁ?何を言ってんだ、袁譚兄上が不甲斐ないから南皮を落とされたんだろ、そんな兄上に任せられる訳ないじゃないか。」

「貴様!兄になんという口をきくか!」

「不甲斐ない者に不甲斐ないと言って何が悪い!」

「貴様!」

袁譚が袁尚の頬を殴り、兄弟喧嘩に発展していく。


「御二方、落ち着いてください!」

「御二方をひきはなせ!」

陣内にいる、将や軍師に引き離され二人の喧嘩は終わるのだが、火種は残ったままであった。


その夜、袁譚は袁尚を置いて南皮に向かい出立する。

「行くぞ、南皮を助けに向かうのだ!」

袁譚が指揮する8万全てを引き連れて行く。


一方袁尚は殴られた事に怒り、やけ酒をしていた為に袁譚の南皮行きを知ったのは翌朝となるのであった。

「あのバカ兄貴がぁ!!」

目が覚めて、袁譚の事を聞いた袁尚は怒りに震えていた、南皮に向かうまではまだいい、しかし、全軍を引き連れて行ったらここはどうする、2万で防げというつもりか!

袁尚の怒りは愚かな袁譚に向いていた。


「袁尚様、如何になさいますか?」

「父上にすぐに連絡しろ!この兵力で防げるはずが無いだろうが!」

袁尚の叫びにも似た声と外から聞こえる声がかぶる。


「何事だ、騒がしいぞ!」

「敵襲です!敵軍が渡河をしてきています!」

「なんだと!」

陣幕の外に出た袁尚が見たのはすでに上陸を開始している高順軍であった。


「防げ!上陸をさせるな!」

袁尚は声をあげるものの、高順の猛攻にすでに陣は荒らされており、命令系統が分断されていた。

「袁尚様!ここは危険にございます、どうかお逃げください!」

「くそっ!これも袁譚のせいだ!皆退却だ!」

袁尚は僅かなともを連れて退却していく、残された兵士は高順に討たれるか、散り散りになり逃げ去っていくのであった。

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