第155話 荀惲

荀彧の息子荀惲は父の言いつけ通り、陳宮がいると思われる高順の陣に祝いの品を携えやって来ていた。

「君が荀彧殿の息子、荀惲か?」

曹操の重臣の子という事もあり、高順自身が対応していた。

「はい、この度陳宮様と曹清様がご結婚なされた事に遅れながら祝いの品を用意して参りました。

陳宮様にお目通り願いたいのですが、何処におられますか?」

「陳宮は作戦遂行中でな、今陣を離れている。

祝いの品については後日陳宮に伝えておこう。」

「それならば、祝いの品をお預け致しますが・・・

高順殿もおわかりの通り、私としましてもそのまま帰る訳にはいかないのです、どうか作戦の一端をお聞かせ願えませんか?」

荀惲は高順ほどの漢なら自分が派遣された理由がバレていることぐらいわかっていた。

ならばこそ、正直に伝え聞き出そうとする。


「さしずめ、郭嘉あたりが不安視しているのだろう、安心しろ、陳宮に曹操と敵対する意志は無い。」

高順の言葉に嘘は感じられない。


「ならば、作戦を教えてもらえませぬか?」

「作戦は他にバレれば失敗する恐れがある、俺から言えるのは袁紹軍が崩れた時が攻勢に出る機会だ、曹操に伝えておけ。」

「かしこまりました、あと、父荀彧からの書状にございます。

陳宮殿への祝辞と伺っておりますれば、祝いの品と共にお渡し願いたい。」

「わかった、受け取ろう。」

「有意義な話し合いが出来て何よりにございます。

曹操様は陳宮様と敵対する意志はございません。

どうかその事をご理解願いたい。」

荀惲は最後まで真摯に高順に訴え、帰路につくのであった。


荀惲を見送る高順の近くに張郃がやって来る。

「若いのに中々の漢だな。」

「子供の世代にも少しはマトモな奴がいたな。」

「多少はいないと曹操陣営の先は真っ暗だからな。」

「言えてるな、まあ陳宮の動きについて来れるかどうかは曹操軍がどれほど俺達を信じているかは測る目安になりそうだ。」

高順は作戦の一端を教えた、袁紹に動きが出たとき、俺達を信じて攻撃に集中出来るかどうか、その事が今後の付き合い方に大きく影響が出ると考えていたのだった。

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