第154話 高幹と呂希

鄴で暮らしている呂希は不満を漏らしていた。


母厳氏の親戚は裕福な商家ではあるものの、ろくな面識もない呂希にかける予算など無い、世間体を考え、屋敷に住まわせ食べれるだけの援助はするのだが、呂希は曹操の重臣陳宮の賃金全てを自由に使い遊んでいた女である、当然の如く親戚の好意すら満足していなかった。


「なによ、こんなみすぼらしい生活させて!」

「落ち着きなさい呂希。」

「お母様、あの厳節とかいう商人にもっとマトモな生活が出来るように言ってよ。」

「待ちなさい、厳節さんも今は大変な時期なのよ、何でも大戦があって資金の提出を求められているそうなのよ。」

「ふーん、だからなに?私の生活に何か関係あるのかしら?」

「呂希、今は少し我慢しなさい、厳節さんも大変なんだから。」

厳氏は諫めるものの呂希には響いていなかった。


そんなある日、厳節の屋敷に袁紹の甥、高幹を招いての酒宴が開かれる、厳節としては高幹を伝手に口利きをお願いするための酒宴なのだが、呂希はその酒宴に顔を出していた。

「なんと美しい娘がいるものだ、厳節あの娘はお前の子か?」

「いえ、あの娘は親戚の娘でございまして、名を呂希と申しまする。」

「呂希か・・・厳節よ、あの娘を私にくれないか?」

「それはもうこちらとしては喜んで・・・

と言いたいのですが、呂希は見た目と違い性格に難がございまして、高幹様のご迷惑にならないか心配な限りでございます。」

「女のワガママぐらいかまわん、厳節、呂希を私の物にするが構わんな?」

「高幹様がよろしいのなら是非お願いしたい。」

「うむ、今日は良い日であるな。」


高幹に見初められた呂希に厳節が事情を説明する。

「つまり、私が高幹様のもとに行けばいいのね?」

「そうだ、高幹様は袁紹様の甥にあたるお方だ、私の家にいるよりは良いだろう。」

「そうね、たしかにそっちの方がマトモな生活が出来そうだわ。」

「行ってくれるか?」

「当然よ。」

呂希は深く考えること無く、高幹のもとに向かうのであった。


「おお、呂希。そなたが来るのを待っていたぞ。」

高幹は呂希を丁重に出迎える。

「あなたが高幹様ですか?わたくしが呂布の娘、呂希にございます。」

「なんと呂布将軍の娘でございましたか、呂布将軍の天下無双の武勇、敵対した身ではあるが、漢として憧れなかった日々は無い。

その娘と縁を持てるとはこの高幹なんという幸運なのだ。」

「父をそれ程まで言っていただきありがとうございます。

父も高幹様を見れば誇りに思われたでしょう。」

呂希は父呂布を褒め称えられ上機嫌であった。


こうして、高幹との仲を深めていく呂希は陳宮のもとを離れていらい久しぶりの贅沢な生活を満喫し始めるのであった。

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