第152話 軍議

「さて、南皮を順当に抑えた、ここからが本当の戦になるぞ。」

「一応言っておくが、城を落とすのも充分戦なんだぞ。」

「油断している城なんかを落とすのは簡単だ、だが野戦は違う、どうやっても将のチカラが物をいうからな。」

俺の言葉に何故かみんなが白い目で見ている。


「どうしたみんな?」

「城を落とすのが一番難しいんだよ!

なんで簡単なことのように言ってる!」

「門を開ければ落ちるだろ?手段を問わなければやり方なんていくらでも・・・」

俺にとってすればチカラのぶつかり合いになる野戦の方が難しく感じる。

張遼がいなければ勝つことも厳しいのではないか・・・


「ダメだこいつは、まったくわかってない。

まあ、こんなポンコツでも俺達の大将だ、大将が役に立たない野戦は俺達の出番だ、みんなわかっているな。」

「「おう!」」

「誰がポンコツだ!

まあ俺達が相手にするのは袁譚軍、およそ10万。

簡単に勝てるとは言えないが、こちらに来る頃には疲労しているはずだ、あと高順が後方より攻撃を仕掛け、俺達と挟撃する予定だ。」

「了解だ、ここからは俺達の仕事だ、陳宮はのんびり眺めていればいい。」

張遼から戦意が溢れているのを感じる。


「わかった、ここからは張遼が大将だ、俺は一介の軍師に戻る、みんな張遼の指示に従ってくれ。」

「はっ!」

魏越、成廉は慣れた様子で承諾する。


「張遼殿にすべてを任せるのですか?」

陸遜は目を丸くして驚いている。

「そうだ、野戦は俺より張遼の方が強い。

ならばすべてを任せた方がいい結果に繋がるからな。」

「指揮官が代わるなんて・・・」

「些細な事だ、張遼か高順に任せれ戦果が上がる、俺はただ責任だけをおえばいいだけだ。」

陸遜の価値観とは大きく違う陳宮の言葉に困惑の色を隠せない。


「陸遜、君が俺より才を発揮してくれたら大将は君でもいいんだよ。」

「いえ、私にそのような才はありませぬゆえ。」

「謙遜しなくてもいい、みんなを納得させれるなら誰が大将になってもかまわないと思っているからな。」

陸遜は陳宮の器の大きさに驚く、優れた者に指揮権を明け渡す度量、自らはトップで無くてもかまわないという謙虚さ、その中で責任だけは負う覚悟、どれをとっても敵わないと感じていた。


「この陸遜、生涯仕える主君を得たようにございます。まずは私を存分にお使いくださいませ。」

陸遜はあらためて臣下の礼をとる。 


「そんな肩苦しい事は無しだ、もっとチカラを抜こうじゃないか、俺達は仲間なんだ上下関係など気にする必要なんて無いさ。」

「そうだぞ、この、鈍感野郎に礼なんて必要無いさ。」

「成廉、お前は少し礼儀を考えろよ。」

「なんでだよ!」

周囲に笑いが漏れる、これから2万で10万の敵と戦おうというのに誰からも悲壮感など感じない、勝って当然かのような雰囲気で軍議が進んでいくのであった。

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