第151話 曹操の反応

「袁紹め、どう出るか。」

曹操は袁紹と対峙しつつ、戦略を議論していた。


現在、青州方面では陳宮軍が兗州では曹操軍が袁紹軍と互いに渡河のタイミングを探りながら、睨み合っている状態が続いていた。


「申し上げます、青州の陳宮軍、およそ2万しかおらぬ模様にございます。」

「2万だと、半数ではないか、残りは何処にいる?」

「わかりませぬ、ですが偵察をした于禁様は陳宮様の布陣ではないと申されました。

一応、将旗はあったのですが。」

「将旗ぐらい陳宮なら気にもしないだろう、于禁の見解が正しいなら、陳宮は何処へ行く・・・」

曹操は陳宮の行方を検討する。


仮に自分が陳宮なら・・・


そう考えると不安になってくる。


現在曹操軍の全力を上げて対袁紹に挑んでいる。

内地はほぼ無防備な状態である。

一応曹操軍である陳宮ならどの城も通過を許すだろう、許昌を落とし、帝を手に入れ、後方から俺に襲いかかれば・・・

そもそも袁紹と連絡を取り合っている可能性はないのか?


曹清、曹彰が近くにいるとして、どれほど抑止出来るのか・・・


いや、陳宮の性格のなら慕っている二人を見捨てるような行動は取らないはずだ。


曹操は陳宮の性格なら大丈夫と思いつつも、これまで陳宮に様々な事をしてきている、そのくせこちらの処罰はほとんど行われていないにも等しい、陳宮は怒っていないのか・・・

怒りを表に出すような男ではない、だが感情が無い訳でも無い。


考え出すと不安要素しか無かった。


「荀彧、郭嘉、陳宮がもし裏切ったらどうなると思う?」

曹操は知恵袋たる二人を呼び密かに検討するのだが・・・

「今裏切られると厳しいですな、今ここから動けば袁紹が襲いかかってくるのは間違いありませぬ、袁紹、陳宮に挟撃されればひとたまりもありませぬ。」

郭嘉はすぐさま答えを出すがそれは絶望とも言える。


「殿、陳宮は裏切るとは思えませぬ。」

「荀彧、俺もそう思う。

しかしだ、我らがこれまでしたことを許せるのかと聞いたらどうだ?」

「・・・たしかに多くの誤解から招いた不幸はありましょう。

しかし、女の事で裏切る真似は致しますまい。

陳宮はそのような事で歴史に名を残す事を嫌いますゆえ。」

荀彧はかつて同じ曹操の軍師として語り合った事もある、陳宮にとって一番大事なのは民の幸せであり、悪政に対してなら不利な状況でも反発するだろう。

しかし、女一人の為に歴史に残るような裏切りをするような者ではない。

それがどれだけ自分の利益になろうともだ。

荀彧は今の状況でも陳宮を信じていた。


「荀彧殿、我ら軍師は最悪の事態を想定すべきです、仮に陳宮が裏切った場合どうなるか検討いたしましょう。」

「郭嘉殿、いらぬ詮索をしたことが陳宮の耳に入れば、今後の禍根となりかねない。

策を弄するより・・・

そうです、陳宮に祝いの品でも贈り、様子を確認するのはいかがでしょうか?

向こうには曹彰様、曹清様もおられます、何かしらの情報が手に入るのでは?」

「祝いの品か・・・」

「はい、先日の結婚は急過ぎましたから、我らとて贈れていないのです、殿が贈らずとも私から贈りましょう、その際使者として息子の荀惲を送れば少しは事情がわかると思います。」

「わかった、荀彧に任せる。

くれぐれも陳宮と争うような真似はするな。息子にもよく言っておいてくれ。」

「わかっております。お任せください。」

荀彧は陳宮への祝いの品を贈るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る