第149話 袁譚と袁尚

袁譚は平原、南皮から兵を集めるだけ集めて黄河に向かい、対峙しながら兵の調練を行っていた。

「陳宮め、先の戦の借りを返してやる。」

官渡の戦いで大軍を率い、アッサリ敗北した袁譚は復讐の炎を燃やしていた。


「袁譚様、袁尚様が援軍に参っております。」

「なんだと、袁尚などいらん!」

家督争いをしている袁尚などに手柄を立てさせる訳にはいかない、さっさと送り返したいのだが・・・

「兄上!父上の命令です、軍権を渡してもらいましょう。」

袁尚は援軍に向かうにあたって、袁紹に全軍の指揮権をねだり、そのまま与えられていた。

この袁尚の寵愛ぶりが家督相続に大きな影響を与えているのだが、袁紹自身は気付いていなかった。


「なっ!軍権を渡せだと、この軍は私が集めたのだ!」

「父上の軍でしょう?

父上は先の戦で無様な敗北をきっした兄上に任せられず私に命じられたのです、速やかに命令に従ってください。」

「そのような命令を受けていない、今一度確認するまでは軍を渡す気は無い。」

「父上の命令に逆らうつもりですか!」

「確認するだけだ、それまでは陣の片隅で大人しくしていろ!」

「兄上!」

「くどいぞ!」

袁譚は袁尚に全軍の指揮権を渡すなどしたくない、対岸に高順と対峙しながら袁譚、袁尚の争いは悪化していく。

指揮権の在り処は将兵にとっても大事なものである。

二人の争いの行方次第で戦後、袁紹の後継者ご決まるかも知れない、どちらにつくか・・・


敵と対峙しながら、関心事はすでに戦後に向けられているのであった。


「高順様、袁尚が袁譚の援軍に加わり、その兵、およそ10万にございます。」

「10万か、よくもまあ集めたものだ。」

「高順様、のんきな事を言っていて良いのですか?

我らは2万、向こうが動けば・・・」

「逆だ。」

「逆?」

「そうだ、袁譚のみの8万なら警戒すべきだが、袁尚が来てことで軍が揺れておる、戦以外の事を気にする軍など敵ではない。」

高順は目の前の敵を打ち破れると考える、陳宮が南皮を奪った報告が届く時、それが戦の好機であろう。


「徐盛に連絡、戦の機は近い!渡河に備えて船を用意しておけと。」

「はっ!」

伝令は徐盛の下に走っていく。


「さて、陳宮こちらはいつでもいけるぞ。」

高順も闘志を燃やしその時を待っていた。

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