第148話 落城
「陳宮様どうでしたか?」
「見事だ甘寧、まさかあれほど簡単に城壁を破るとは。」
「壁には登り方があるんです、上手くやれば簡単に越えられます。」
「それだけではあるまい、敵兵に声も出させず始末していく力量、俺の想像以上だ。」
俺は甘寧の力量を改めて目の当たりにして、章武を任せて守備に当てるだけでいいのか迷う、これ程の力量なら前線に出てもらいたいどころではあったのだ。
「陳宮、章武はワシラが守ろう。」
黄蓋が思わぬ提案をしてくる。
「黄蓋殿、それは些か頼りすぎかと。」
「今更じゃ、孫香様を前線に出すわけにも行かぬからな、戦になる前に撤退するが、要はワシラがお前達の退路になればよいのじゃろ?」
「ええ、ですのでこの章武は要になるかと。」
「船に乗るなどどこでも出来る、敵のおらん地域で乗れば良いだけじゃ。
ワシラがそこで拾ってやるからのう。」
黄蓋の言う通り、撤退は黄蓋任せである、退路があるのなら章武を守るより、全軍で袁紹に当たった方が勝てる可能性が高い。
「黄蓋殿、お言葉に甘えさせていただく。」
「かまわん、結納がわ・・・」
「黄蓋はいらないことまで言わないで。」
孫香が黄蓋の口を塞ぐ。
「陳宮様、私が黄蓋と共にここを守りますゆえ、安心して袁紹を攻めてくださいませ。」
「孫香殿、感謝致す、甘寧聞いての通り、一緒に行こうか。」
「おう!腕が鳴る!」
甘寧は嬉しそうに答える、どうやら甘寧自身も前線で戦いたい気持ちが強いようだった。
「よし!出立するぞ!」
俺達は章武を黄蓋に任せて、浮陽に向かい軍を進める。
「おかしいな、張遼達と合流出来ない、この辺りで合流のはずなのだが・・・」
俺は予定の合流地点に張遼がいない事に不思議に思う。
するとして張遼軍の伝令がやって来る。
「申し上げます、張遼様が浮陽を落としました、陳宮様はそのまま入城してください、との事です。」
「あいつは・・・」
俺は張遼の凄さをあらためて実感する。
「陳宮様、張遼殿の行為は流石に独断専行ではありませぬか?」
陸遜が俺に進言してくる。
「たしかにそうだがな、だが俺は張遼の判断を尊重する、あいつが行けると思ったならその判断が正しい。」
「しかし、それだと軍規に影響が・・・」
「陸遜、誰にでも許す訳では無い、張遼だからこそ信じて任せれるのだ。
もしそれでも敗けたとしてもそれは俺が指揮をとっていても敗けたということだ。」
そこには張遼に対する厚い信頼があった。
「わかりました。出過ぎた真似をして申し訳ありません。」
「いや、陸遜の進言は間違ってない。
多分、俺の方が間違っているような気がするからな。
何か気になる事があれば何でも言ってくれ。」
「はっ。」
俺達は張遼が落とした浮陽に向かうのだった。
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