第147話 初戦

「行くぞ、出陣だ。」

俺達は黄蓋の船に乗り、章武を目指し出陣していく。

「陳宮様、どうかご無事で・・・」

港から曹清が祈るように見守っていた。


船が見えなくなるまで見送っていた曹清はふと孫香の姿が見えない事に気付く。

「誰か孫香さんの姿を見たものはいませんか?」

曹清の問いに大喬、小喬を含めて皆が首を振る。


「まさか!」

曹清は嫌な予感を感じながら見えなくなった船の方向を見ていた。


「孫香さん、何故船にいるのですか?」

出港してから暫くしてから孫香が俺の前に姿を現す。

「あら、この船は孫家の船ですよ、私がいて何か問題が?」

「たしかに問題は無いのですが・・・」

一度出航した以上もう一度戻るような真似は士気にも関わる為、行うことが出来ない、かと言って戦場に連れて行くわけにもいかない。

俺が悩んでいると黄蓋が声をかけてくる。


「陳宮殿、孫香様は私が面倒を見る、安心して戦に挑め。」

悩む俺に黄蓋が助け船を出す。


「黄蓋殿なら安心できます。

孫香さんくれぐれも黄蓋殿から離れないように。」

「わかってます、私は陳宮様の武勇伝を楽しみにしていますわ。」

孫香は嬉しそうにしていた。


「さて、甘寧、どうやって章武をおとす?」

俺は甘寧から確認をとる。

甘寧の作戦が悪いようなら正攻法も考えているのだが。

「早朝に奇襲をかける、門を開けるからそのまま入ってくればいい。」

川賊上がりの甘寧にとって小さな城の城壁を登り忍び込むなどこれまで何度も経験してきた事だった。


「早朝に奇襲か、悪くない手だな、張遼、成廉、魏越は街の手前で降りて報せに走る伝令を捕まえてくれ。

章武を落とした後、次に侵攻する。」

俺は甘寧の策を採用する。

失敗するようなら正攻法で落とすつもりであった。


早朝、日が明ける前に甘寧は動く、手勢を率いて城壁をアッサリ登り、城壁の上に。

「趙雲、どうなっているか見えるか?」

俺の目には暗すぎて様子がわからないので隣に控えていた趙雲にたずねる。

「見事な手並みで敵に気付かれず進んでおりますな。」

「見えるのか?」

俺は目を凝らすがよくわからない。


「見えるというより感じるのです、甘寧の強い気配が素早く門の上を移動しております。

おっと、そろそろ開門しそうですな。」

趙雲の言う通り、暫くすると門が開く。

「全軍突撃、すぐに落とすぞ!」

門が開いた城は守りきれない、程なくして章武は陥落するのであった。

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