第145話 曹操軍と袁紹軍

まずは先の戦のように高順が黄河に軍を送り、姿を袁紹軍に見せる。


「袁紹様!陳宮軍に動きがありました!」

すぐさま鄴の袁紹の下に連絡が届く。

「またか、陳宮一人の動きとは考えられん、曹操の動きに警戒せよ、陳宮には袁譚に南皮、平原の軍を指揮させる、渡河を防がせろ。」

「袁紹様、陳宮の相手をするのに袁譚様では荷が重いのではありませぬか?」

沮授は袁譚に戦の才が無いことに気付いており、陳宮にいいようにやられないか不安があったのだ。


「陳宮といえど兵力差は覆せん、先の官渡の戦いでは奇策により被害を与えられたが、此度はジックリと攻めるように伝えておく、沮授の心配は無用だ。」

袁紹は先の戦で臨淄をあと一歩というところまで追い詰めていた、その為に陳宮といえど敵ではないと感じていた。


「沮授、それより曹操の動きに気をつけるべきと思うのだが?」

「たしかに陳宮が一人で軍を起こすとは思えませぬ、曹操も動きがあるでしょう。」

沮授にしても陳宮が陽動、もしくは本命だとしても曹操が動くのはまちがいないと感じていた。


先の戦で夏侯惇が敗戦したとはいえ、本来曹操自身が戦場に立つのが常である。

警戒すべきは曹操か・・・

沮授を含めた袁紹軍の軍師達は曹操の動きを警戒していた。


「なに?陳宮が袁紹に向けて軍を起こした?」

曹操にしても寝耳に水であった。

本来なら中央で作戦を立てるべき案件ではあるのだが、曹清の一件もあり、陳宮の勢力は中央との関係が悪い。

独自で動いた事を曹操が責めれば更に関係が悪化するだろう。


それに陳宮が動いたということは何処かに勝機を見出したに違いない。

「荀彧、軍師を集めろ、戦略を練る、夏侯惇は軍を起こしておいてくれ。」

曹操も動き始める。


「郭嘉、陳宮の狙いは何だと思う?」

「読めませぬな、あまりに情報が少な過ぎます、今の陳宮の軍勢はおよそ5万、最大の強みは呂布軍から引き継ぐ騎兵にあります、ですが黄河を渡らねばその力を出すことも出来ない、袁紹もそれがわかっているでしょうから、川を間に睨み合いになりそうですが・・・」

「俺もそう思うが、アイツは何を考えている?

自身を囮に以前のように陽動をかけるつもりか?」

「いえ、それならば我らにも連絡があるでしょう、ですがそれをしていないとなると、自分達だけで攻めるつもりなのでは?」

「無謀だな・・・」

曹操を含め、軍師達も陳宮の行動を予測しきれなかった、だが陳宮の敗戦は曹操軍の崩壊を招きかねない、曹操は急ぎ軍を起こし、黎陽の対岸、白馬に布陣する。


今一度、天下をかけた大戦が始まろうとしていた。

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