第144話 援軍を

袁紹攻めの船を孫権が派遣してくれたのだが・・・

「姫様、此度のワガママ、どのような事ですか。」

孫権から援軍として、古参の老将黄蓋がやって来ていた。


「黄蓋、なぜあなたが・・・」

孫香は驚きとイタズラがバレた子供のように気まずそうな表情を見せる。

「姫様がまたワガママを押し通そうとしていると聞き、無理を言って私がやってきました。

さあ、事情をお話ください。」

孫香に詰め寄ろうとする黄蓋の前に俺は立ちふさがる。


「黄蓋殿、お久しぶりです。」

俺は以前、董卓を倒そうと連合軍で戦った時に孫堅配下であった黄蓋とは面識があった。

「陳宮殿、お久しぶりですな、失礼、礼が遅れた事をお詫びいたす。」

「お気になさらず、黄蓋殿が孫香殿を大事に思っている気持ちが伝わってきておりましたから。」

「わかるか陳宮、この姫様は昔からお転婆でな、武芸ばかり磨いて女子らしいことは何の興味も持たない。

この度急に嫁ぐと言い出したと思ったら戦船を用意しろだとかまったく何を考えているのやら・・・」

「ご苦労さまです。

うん?とつぐ?」

「黄蓋、小言は別に聞きます!

陳宮様、少々予定外ではありますがこれで戦船を用意出来ましたね。」

孫香は慌てて黄蓋の口を塞ぎ、俺達の話に割って入る。


「ああ、これだけの船があれば海から攻める事が出来るだろう。

黄蓋殿、船をお借り致す。

孫権殿にはよろしくお伝えください。」

「陳宮殿何を申すか、船というのは簡単に扱えるものではない、我らが送り届けてやろう。」

「黄蓋殿、それをすると袁紹との戦に巻き込んでしまいます。」

「今更じゃな、それにお主に貸しを作る事が姫様の為にもなりそうじゃしな。」

黄蓋は長年面倒を見てきた孫香が初めて見せた女の表情に一目で気付いていた。

暫く会わないうちに可愛くなったものだと、微笑ましい思いを感じる。

それならばと小言は後でするとして、孫香の為に一働きするつもりになったのだった。


「今は借りておきます、この陳宮、感謝と共に記憶しておきましょう。」

俺は黄蓋に礼を取る。

こうして黄河を迂回して南皮を攻める策が。完成する。


俺は今回軍を二分することにする。

海から南皮を攻めるのは俺を大将に張遼、成廉、魏越、趙雲、周倉、甘寧、陸遜を将とする。


対して青州より攻め上がるのは高順を大将に張郃、劉辟、臧覇、徐盛であった。


互いに二万の兵を運用し、袁紹軍を倒す事を目指すのであった。

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