第142話 新たな武将

曹清がモヤモヤした想いを抱える中、俺は張郃が街で見かけた一人の武将と面会していた。


「貴殿が公孫瓚軍にその人有りと言われた趙雲殿か?」

「たしかに私は趙雲ですが、それ程の者ではございません。

今はただ一介の浪人にしか過ぎませぬ。」

「ご冗談を貴殿の武勇は聞き及んでおります、どうでしょう、私の軍に入り天下の為にお力をお貸し願いたい。」

「今の私は主無き身ではございますが、どうも曹操殿の下に付きたいとは思えませぬ。

どうか仕官の話はお断りさせてもらいたい。」

「曹操の下と申されるがそのような些細な事、民の安寧の為に如何様な価値があろう!」

「ならば問いましょう、この徐州での虐殺をご覧なさい、曹操の下では安寧な日々など有り得ないではないですか。」

「たしかに曹操は激情に流される所もある、だがそのような時は下が止めれば良い。

いや、止めれずとも身を盾にしてでも歯向かう覚悟はある。」

「そのようなこと・・・いや、陳宮殿は呂布殿を立てて実際に行ったのでしたな。」

「徐州の虐殺は止めれなかった私にも非がある。

二度とあのような出来事を起こさぬ為にも私はチカラをつけ曹操に意見出来る身である必要があるのだ。」

俺は趙雲に真剣な眼を向ける。


「趙雲殿、今は乱世の時代。力無き者が虐げられてしまう世の中だ。

私は一日も早くこの乱世を終わらせ平穏な世を作りたいと思っている。

その為に私にチカラを貸してくれないだろうか。」

「乱世を終わらせるですか。」

「そうだ、戦争が続く世の中を私達の手で終わらせるのだ。

その為に私心は捨てて、天下の為に尽くしてもらえないだろうか。」

「なるほど、その目に偽りは無さそうだ。

この趙雲の武、陳宮殿に預けましょう。」

「趙雲殿、ありがたい!」

俺は趙雲の手を取り喜ぶ。

「天下の為にございます。」


俺の傘下にまた一人の豪傑が入ってくる。

「陳宮殿、近くの山賊で中々の者を知っている、私が連れて来るので召し抱えてもらえないだろうか?」

「豪の者が味方になってくれるならありがたい話だ。」

俺が認めると趙雲はすぐに出立して、三日後には一人の男を連れてきていた。

「趙雲殿、そちらのものは?」

「周倉という山賊にございます。

周倉挨拶をしろ。」

「お初にお目にかかる、手前周倉と申しまする、趙雲より天下の為にチカラを尽くせと言われ、陳宮様にお味方致そうと参った次第にございます。

どうか末席にて活躍の場をお与えくだされ。」

「周倉、こちらこそ頼む。

天下の為にその武勇、思う存分使ってくれ。

さあ、二人を歓迎しよう。

皆、今宵は宴といたすぞ。」

俺は二人の顔見せの意味もこめ、この夜は盛大な宴を催すのであった。

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